―――イヨ! ん?リィン…? ―――起きてって!起きて!また腐っ…変なアイツ来てる!あ、ちょ、触るな!イヨに触るなこのっ! アイツ…? 「…シドレ」 「はいイヨさん!おはようございます!」 またツバサが仕事中だったのでいつも使わせてもらっている部屋で寝ていたイヨ。だったがリィンに起こされ目を開けるとそこにはイヨの頬を撫でる様に触っていたシドレがいた。 「…私に、触るな!!」 「えぇ!?」 すぐシドレの腕を掴むとイヨは起き上がり、持ち前の素早さでベッドから降りる。そして緩めていたネクタイ代わりの赤い帯やYシャツのボタンをきっちりと直した。 「何故毎回お前は私に触れたがる!しかも人が寝ている時に!」 「だってイヨさん、寝ている時ぐらいしか隙ないんですもん。でも初めは寝てる時も隙ありませんでしたよね!」 「それは、最近任務疲れで眠たいからだ」 例の睡眠障害とは言えず、イヨは予め用意していた言葉を言う。だが、任務疲れも嘘ではない。 「さぁイヨさん!続きを!」 「しない!ツバサが仕事中だからと言って調子に乗…こっち来るな!私はこういうの苦手だから…っ」 「そこがまた萌えなんですよ!それとも体を見られたくない理由でも?またツバサさんにつけられた跡でも残って…」 「ち、違…あ、銃が…!」 「寝ている時に借りました。スカートの裏に隠すなんて…太もも見てくださいと同じ意味ですよ!きっちり見ましたよ!」 「はぁ!?シドレ、お前いい加減に…」「シドレ!またここにいたな!?」 バンッと扉が壊れるのではないかと言うぐらい音を発ててワールが入ってきた。その手には刀が握ってあり、シドレに向けて抜刀。だがシドレも慣れた様に「ひゃっ!」と言いつつ避けた。 「またお前は性懲りもなく!」 「それが私です!」 ぎゃあぎゃあ騒ぎながらシドレを攻撃するワールとその攻撃を避けるシドレをイヨが眺めていると少し遅れてアイがイヨの隣にやってきた。こんな状況に遇うのはもう何回だろうと寝起きで少し不機嫌なイヨが胸の中で呟く。 「あ、アイか…」 「またシドレがすまないな」 「だったら早く来い。こっちは大変迷惑だ」 「…………?」 不機嫌なせいか悪態をつくいつもと違うイヨに、アイは彼女に振り向くが彼女は至っていつもと同じ様に見えた。だがここにもし心を視れる十闇がいたとしたら十闇はガタガタ震えていることだろう。 「ったく…シドレ、ワール煩い」 「え?…あっ!」 「は?…うわっ!」 突然、ワールの足がよろけシドレがまだ持っていた二挺の銃が素早い何かで叩かれ離れていたイヨの手元に戻ってきた。二人がわけもわからずイヨの方に振り向くと二本だけ棘を出した彼女がいた。 つまり、今の一瞬でイヨが棘を彼の足に引っかけてシドレの手を叩いたということだ。 「イ、イヨさん…?」 「人が黙っていれば調子に乗りやがって、いい加減にしろって言っているだろう?ワールもアイも解っているならさっさと来い」 「なんで俺まで…」 「黙れ」 「う、………」 「確かにシドレが一番悪いが解っていてお前等もこうなるコトを予想していたのだろう?なら何故すぐ止めない。親戚だが幼馴染みだが知らんがだったら尚更だろう」 見た目はシドレ達と同じ容姿だがさすが200年以上生きているせいか有無を言わせない威圧感纏い、若干睨みながらイヨは言う。 「イヨさん、落ち着いて…」 「アイも黙れ。サングラスごと目潰すぞ」 「!!?」 俺何もしてない…。そう思いつつも口に出せずただ黙る。しかしシドレとワールが吹き出しそうな顔をしていたのでアイが睨むと二人はすぐに黙った。 「そうだな…ツバサの部下だからといって甘くみていた私も馬鹿だったな」 「?イ、イヨさん…?一体何を…」 シドレが恐る恐る訊くとイヨはまだツバサにも見せたことがない貼り付けた様な綺麗な笑みを浮かべた。その見たことがない笑顔に三人共体を強張らせる。 「無理矢理起こされしかも目の前で騒がれて私はとても不愉快だ」 そう呟くとイヨはシドレとワールに向けて一挺、隣にいるアイに向けてもう一挺、それぞれに銃を構えた。 「ガキ共が、只で済まされるとは思うなよ?沈めるぞ」 ――――――――――― それから数分後、タイミングよくツバサがやってきてイヨをなんとか宥めたが部屋の壁には銃弾の跡が何個かあり、そして避けるのに疲れ、息を切らしていた三人がいたという。 「なにやったの?」 「軽く寝起きの運動をしただけだ」 |