「なっそこのメッシュのヤツ!」 「?」 街中で突然明るい声に呼び止められたツバサ。 振り向くとそこには栗色でボサボサ頭、珍しいオレンジ色の瞳をしている青年が笑顔でこちらを見ていた。 「アンタ、ツバサって人だろ?」 「そうだけど…」 この色何処かで見覚えがあるなぁと思いながらツバサは青年の問いに返事を返した。 「不老不死で?」 「まぁ…」 「何かよく解んねぇけどデカイ組織のリーダーの一人で?」 「うん…」 「で、イヨの彼氏なんだろ?」 「うん。って、なんでそれを…」 イヨや自分みたいに『こっち側』の人間なら自分の事を知っていてもおかしくはないが自分とイヨが付き合っているという事はあまり知られていない。 筈なのにこの男は知っている。 少し警戒して青年をツバサは見直すと青年は「あーそんな風に見んなよ!」と大袈裟に手を振って耳に着けていたヘッドフォンを首に下げた。 「俺は日暗、一応革命組織の隊長やってるんだ。 で、イヨの兄貴!!よろしくなっ」 「は?」 にこっと屈託の無い笑顔を浮かべて言う自称イヨの兄貴 首にはヘッドフォン 服装はパーカーにカーゴパンツ こいつが? 「やっぱり信じてもらえねぇか? あ、ならイヨのスリーサイズとか下着の色とか教えてやろうか?…ってそりゃダメか、イヨに怒られちまう。じゃあイヨに電話してみろよ!『イヨのスリーサイズとか下着の色とか知ってるらしい自称兄貴がいるんだけど』でどーよ?」 「……………はぁ。」 テンションについていけない。 そして何で彼女のスリーサイズと下着の色を知っている? イヨの兄貴、日暗と初めて会話した時のツバサの感想がこれだった。 「まぁこんな人が多い歩道で話すのはなんだし場所変えね?」 「うっわー!アンタの書斎デッカイなぁ!デカイ組織のリーダーだと部屋もデカくなるもんだな、やっぱ!」 「それはどうも」 あの後、日暗の素かどうか解らないが旨い口車に乗せられ自分の書斎に日暗を連れてきてしまったツバサ 「イヨのお兄さんも組織の隊長なんでしょ?大して変わらないと思うけどな」 「んー?俺の組織、俺含めて三人しかいねぇし。だからちゃんとした拠点地無いんだよなー宿屋点々としてるんだ。あ、イヨのお兄さんとか恥ずかしいからやめてくれよ?日暗、または日暗お兄さんで」 「解ったよ。じゃあ日暗で」 「俺もアンタのコトツバサって呼ぶからな!このソファー座って良い?」 「うん。」 ツバサの了承に日暗は「よっしゃ」と小さく言ってソファーに座る。 ツバサは向かい合わせにあるもう一つのソファーに座った。 そのツバサの顔を日暗はイヨと同じオレンジ色の瞳でまたじぃっと見つめる 「また何か?」 「いや、違げーよ。 ただ…ツバサはツバサで大変だなと それは置いといて、ツバサ質問して良いか?」 「どうぞ好きなことを」 「ぶっちゃけイヨとは何処までいってる?やることはもうやっちまったって感じか?」 「………さらっと危険な言葉を言うんだね、君。良いの?日暗はイヨの兄貴なのに」 「だから訊くんだよ!俺の可愛い妹がきちんと幸せになってるかどうか確かめてやるっつーのっ!!」 ビシィッとツバサに指を差して言う日暗 この場にイヨがいたらきっと日暗の指を握って「人に指を差すな」と言いながらその指を逆方向に曲げているだろうな…と考えた 「で、実際どーなった?」 「まぁ…ね?」 「―――――――やっぱり?」 少し意地悪な笑みをしながら日暗に返事を返すと効果覿面。彼のHPを100だとすると今の笑顔と答えに残りのHPが10近くまで削られた様な感じでそのままぐでーっとソファーとソファーの間にあるテーブルに伸びてしまった 「やっぱりやっちゃったのかよ…俺のイヨがどんどん遠ざかってくぜコノヤロー。訊かなきゃ良かった…」 「自業自得だね。」 ツバサの嘲笑う様な声色に日暗は起き上がる 「うっせバーカ!最初からコイツなんか胡散臭いって思ってたけどもっと胡散臭く見えてきたぜ。俺のイヨを返せー!」 「無理な相談」 「でもなぁ…返せで返してもらってもイヨは幸せじゃないよなぁ」 「ちょっと人の話訊いてる?」 「訊いてません。 ―――イヨはな、ちょっと普通のヒトと違うんだよ。」 「……………?」 途中から今までのテンションとは180度変わり落ち着いた声で話始める日暗 「色々と複雑でなー。ツバサがイヨにとって『初めて』な存在なんだよ。十闇という存在も初めてだったがツバサはツバサでまた違う存在。そのツバサをイヨはアレだ、好きなんだよな」 「知っているよ。俺もイヨが好きだ」 「それなら良いや。……その気持ち忘れるなよ?イヨを泣かしたら許さねぇからな。」 「可愛すぎてて色んな意味でなかしたくなる気は解るけどな♪」と付け足して、日暗は無邪気な子供の様な笑みをした。 その後、日暗の携帯がいきなり鳴って会話を暫くしてからバツが悪そうにツバサに向き直る 「悪いツバサ!そろそろ革命の時間になっちまったや、帰るな!」 「そろそろって大丈夫なの?」 「場所は約300キロ先なんだよなー。ま、走ったらすぐだろ。」 「え?」 さも当たり前の様に言う日暗にツバサはつい声を漏らす。 その間に日暗は窓を開けてよいしょと言いながら手を掛けた 「俺、足速いのが取り柄なんだよ。 じゃあ窓から失礼なっ。さいなら!」 「あっ…」 急いでツバサが窓の下を覗くとそこには器用に壁の凹凸を利用して降りていく日暗がいて、あっと言う間に地上に降りた日暗がツバサの方に向き直り手を振る。 そして彼が向きを変えたかと思ったらその場から消えてしまっていた。 「妹が妹なら兄も兄だね…いや逆か」 そう一人でに呟き、最後まで予想がつかなかった日暗の行動にツバサは小さくため息をついた。 ――――――――― 兄貴はいつも本能のままに動いているんだ!多分。 |