通常コラボ小説 | ナノ


※地味に本編と絡めてみました。

※本編と絡ませてみたけどコラボと本編は関係ありません


※イヨ視点















「一時間経つな…」

「………?」


聞き覚えのある声が聞こえて、目を開けるとさらさら流れる様な綺麗な金髪にメッシュが入っているツバサが私を覗きこむ様に見ていた。

確か、私がツバサの部屋に来て普通に喋ったりとか多分カップルらしくのんびりしてたら誰だっけ…リカだっけな?そいつがツバサを仕事の件で呼んでツバサが少し席を外したんだよな。
それで残された私は数分絶ってから遅いなと思いつつソファーの上で寝てしまっ…あれ?


起き上がると、全体がふかふかしていてソファーで寝ているのなら足を曲げている筈なのに伸びていて、一瞬何がどうなっているか解らなかった。


「座ったまま寝てたら辛いだろうからベッドに移したんだよ」

少し混乱している私にツバサが説明してくれた。
そっか…また私は…


「どれぐらい寝ていた?」

「一時間ぐらいかな」

「!?…一時間も…何故起こしてくれなかったんだ!」

「熟睡してたし、起こすの悪いでしょ?」


確かに寝ている人を起こすのは悪い。ツバサの言う通りだ。

でも…私は、
嫌だ、起こして、それに


「熟睡してたんだろ?」

「うん。いつものイヨなら寝ていても触ったら起きるのに起きなかったからね」




―――――――――やっぱり。

最近私とリィんの境界が曖昧になっているから、私は…最近よく寝てしまう。寝たくないのに
きっと、最後は…


俯きながら無意識に彼の服の袖を強く握る。

解っている、解っているよ。
私は解っている。大丈夫、大丈夫だから、大丈夫だから。


「ツ、…っ」

「…なに?」

「水、飲みたい」

「イヨどうしたの?変だよ?怖い夢でも見たのかい?」


怖い夢、か…ただの夢ならどんなに良いことだろうか


「大丈夫、ちょっとまだ眠たいだけ。だから水くれ」

「……解った。」



暫く間を置いてから『彼』は私から離れて水を入れに行った。
再び誰も居ない、彼の個性も何もない無機質に近い部屋で一人残される。



うずくまる様にベッドの上で小さく座る。
今は彼も居ない。だからちょっと弱気になっても大丈夫かな…今の私の顔を彼には見せられない、彼に心配と同時に別な何かを与えてしまうから


怖いよ、事実を受け入れたくない。

さっき、私が寝る前に彼を呼んだ奴の名前…リカが解らなかった。
アイツには何回か逢ったコトがあるのに一瞬誰だか解らなかった。


それと同じで今、彼の名前を忘れていた。いや、忘れてしまっている.




「――――――――っ」



怖くなって、自分の腕を握る。
ギリッっと爪が肉に食い込む程握ってしまって、ちょっと服に血が滲んだけど今日は黒いワンピースを着ているからバレない…かな。彼に心配をかけてしまうのは嫌だな。なのに、私は…



「…………………は、ぁ…っ」



無理に思いだそうとしたら息が詰まって呼吸が乱れる。

落ち着いて、私。
オレが私に彼の名前を教えようとしてくれている。
でも、
ダメだよ。
彼のコトは私がちゃんと思い出さないと、

彼と過ごした時間や日々の記憶はまだ残っているから思い出せる筈。
ちょっと恥ずかしくて、過ごした時間、言動、全てが初めてな経験で…でもとても暖かい日々。

そして彼も私と同じで何かを隠している。


思い出して、思い出せイヨ。




「嫌だよ、忘れたくない…っ」


彼の、彼の名前は…











「…バサ、ツバサ…ツバサ…」





そうだ、彼の名前はツバサだ。
ツバサなんだ。
彼の名前を何回も言う。
もしかしたら口にも出しているかもしれないけど気にする余裕なんてない


最近よくあるコトだ。すぐ思い出せるけど忘れたくない…
だから削られるより早く、記憶に上書きするようにツバサの名前を言う。





そんなことをしていると水が入っているコップを持って彼が戻って来た。

ツバサを見た途端一気に落ち着いて、自業自得でつけた傷の浅い痛みを堪えながら私はいつもの顔でツバサを迎えて「有難う」って言った。
大丈夫、もう大丈夫。忘れない、忘れても頑張って思い出すから
まだツバサに真実を言うことは出来ないけど言える日がいつか来るコトを私は願った。





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