通常コラボ小説 | ナノ


※永倉さまの『Tying string』の続き
よって
The two people
其々徒然
Tying string
の順に読んでから読むのを推薦します
















『こわいね、人間って』


ツバサが端末越しに言った言葉がイヨの頭に引っ掛かった。

それにさっきから、ツバサが咳き込んでから妙に落ち着かない、胸騒ぎがする。



「………………」

『イヨ?』

「やっぱり、顔を見ないとな…」


ボソッと呟くイヨ。そして座っていた自分の部屋のソファーから立ち上がった。


『え?今なんて言ったの?』


「何にも。狂気か…それに自分自身を完全に把握とかなぁ…」

歩きながら、イヨは話し続ける。


カチャッ


『…扉を開けた音?』

「今日のお前は言い方が回りくどくて理解しにくいな」

『そうかな?』

「そうだ。」


話しながらイヨは十闇の部屋に入る。端末を持っているイヨに十闇は首を傾げたが、さすが相棒と言うべきか彼女を見ただけで全てが解り、苦笑して指を一回鳴らした。













「えーイヨってそんなに頭悪かったけ?」

「悪くて悪かったな」

「……え?」



ふいに聞こえるイヨの声。
端末越しからではなく目の前から

ツバサはペンを置き、仕事をしていた手を止めて前を見る。

すると長い栗色の髪と、彼女がいつもつけている赤い帯にそれをとめる花の絵が彫ってあるブローチが目に写る。

更に顔をあげると彼女特有のオレンジ色の瞳がこちらを見据えていた



「わー瞬間移動?」

「仲間の能力さ。端末は便利だが相手の顔が見れないのが気にくわない
…仕事の邪魔か?」

「いや良いよ、今の今まで喋ってたし。あと少しで終わりそうだしね
それより、イヨから来るなんて珍しいね」

「咳き込んだのが気になった」

「大したことないって」

「…………………………。」



ツバサのいつも何処か余裕な表情をイヨはじぃっと見つめる。

しかしツバサは何も言わない。


…言えないのか?


「もう良い。この事については何も問わない」

「何で?」


ツバサが不思議そうな顔をする。


「…………妙な胸騒ぎがする。
ツバサが答えを述べてしまうと………とにかく怖いんだ。」


俯き、自分の服の袖を強く握りながら言うイヨ

そのイヨをツバサは困った様に見ると席を立ち、ぎゅっとイヨを優しく抱き締めた。


「ごめんね、イヨ」

「謝るな。私が謝らなければならなくなる」




私もツバサに言えないコトはいっぱいある。言いたいけど言えないコトが。だから、ツバサの気持ちは解る気がする



だが


「…そろそろ離せ。またろくでもないコトを考えてるだろう」

「あ、バレた?このまま今日は帰さないよーって思ってたんだけど」

「ふ、ふざけるな阿呆が!離せっ」



顔を赤らめ、イヨは無理矢理ツバサをひっぺばかしデスクの椅子に座ってろと言った。

ツバサが「いつまでたっても初だな。」と思いつつ素直に座るとイヨは書類やらパソコンやら置いているデスクの端に器用に座り、勝手に彼の書類を読みながら話を戻す。



「…話を戻すぞ、支配欲がどうだとか言ってたな。」

「うん。だって鈴芽って色々抱えてる様に見えるから。あとイヨ、その書類の内容解るの?一応暗号化されてるんだけど」

「このぐらいの暗号見ただけで解る。たぶん。確かに鈴芽は独占欲の高い鈴見の元となったヤツだから支配欲が強いのだろうな」

「それが狂気に繋がってるんだよ」

「………ツバサは鈴芽が嫌いか?」


二枚目の書類を読みながら表情を曇らせてイヨは言う


「どうだろうね、でもイヨには悪いけど危ないヤツっぽいし」


「…鈴芽の能力を知ってるか?」

「……?」

「構築と爆発。相反する矛盾の能力。これが何を意味するか解るか?」

「さぁ」

「鈴芽は残酷な一面もあるが本当は優しい奴だ。自分の中で狂気と戦っているんだよ。その鈴芽の言葉を綺麗事とか言うなんて…心外だ」


ものの数秒で二枚目の書類を読み終え、書類を床に放り投げると若干鋭い目付きでツバサを睨むイヨ

珍しく本気で怒っている彼女に顔には出さないがツバサは驚いていた


「別に鈴芽のコトを言ったわけじゃないんだけどな」

「暗号が単純だ、もっと工夫しろ。
…じゃあこっちから問うがツバサは完全に自らを把握、支配、制御しているのか?」


「………どうだろうね」


何とも言えない悲しそうな笑みでツバサは言う
そのツバサにイヨは自分の左手を彼の右手に置いて、優しく握り真っ直ぐツバサを見た。


「もし私が完全に自らを把握、支配、制御していたらきっとツバサとは付き合わなかった。」

「……………は?」

「未来を考えたら、怖くなる。
いつか別れがくるかもしれない。
この人と思い出を作ってもある日私は革命で死んで、ツバサを一人にさせてしまうかもしれない。だったら付き合うのはやめた方が良い。…何度もそう思った。たまに今でもそう思う。
――だがな、結局いつも自らを把握、支配、制御と云う『理性』よりツバサと一緒にいたいって云う『本能』が勝ってしまうんだよ」




「可愛いこと言うね」


ツバサが彼女なら顔を真っ赤にするであろう言葉を口にする。
だが彼女は顔を真っ赤にしないで眉一つ変えず目を瞑った。



「別に可愛くないさ。
私もツバサも鈴芽も鈴見もソラも他の奴等も『今』を精一杯生きてるんだ。誰も未来を言い切るコトなんて出来ないしそんな余裕なんて無いと、私は思うな」


目を開けて、朝日の様な夕日の様な橙色の透き通った瞳でツバサを見つめたイヨ。
書斎には時計の秒針が刻まれる音だけが響いていた。








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