目が見えない人の願い[後] (1/6) 初めて彼女と出逢ったのは何時だったでしょうか…まだ彼女が小さい子供だった時に私と彼女は出逢いました。 彼女は生まれつき目が見えませんでした。ですがだからこそ他のモノに敏感で、不思議な感性を持つ人なのです。 彼女と初めてあった時は春で、私はまだ綺麗に咲いていて、周りを悠々と眺めていました。 そんなある日、彼女は私の近くでボールで遊んでいたらそのボールが私の木に引っ掛かってしまったのです。 それが彼女と私の最初の出逢い。 彼女がボールを取ろうとしても当然手は届かず、困っていました。よくある事です。ボールは勿論、子供が飛ばした紙飛行機が私に引っ掛かる時もあります。 そういう時は風が靡いたと同時に木を揺すり落としているのです。 彼女の時もそうしました。 風が靡いたと同時に、こっそりと木を揺すってボールを落としました。 彼女はボールが落ちて来て手元に戻ってきたのを嬉しそうにしていました。 しかしそれだけでは無かったのです。 ボールが手元に戻ったあと、彼女はこう言いました。 「だれかちかくにいるの?おねがい、お礼をいわせて」 と、 この時に彼女は目が見えないのだと私は気がつきました。 ボールを落としたのは人間ではなく『桜』の私。 そんなことを知らないし、解らない彼女はその場でずっと「だれがボールを落としてくれたの?おへんじしてくれないの?いじわるしてるの?」と呟いていました。 そして終いには瞳に涙を溜め始めたのです。 私はその時、どうしたら良いか解らなかった…「私が落とした」と正直に言えば、彼女は泣き止むでしょう。あの時の私は少し力を使えば人間に話し掛ける事は余裕でした。ですが人ではない存在が人間に話し掛けるのは『してはいけない事』 そう考えている内に時刻は夕暮れ。もともと彼女がこの場所に来てボールで遊んでいたときには既に昼の三時頃。そろそろ彼女は家に帰らないと親が心配してしまう しかし、彼女は目が見えないのに何故親が傍にいないのか…それが疑問でした。 そしてついに彼女は泣き出しました。 そして私はまさに口が滑って 「私が拾ったんだ。ごめんね」 と彼女に向かって言ってしまったのです。もう後戻りが出来なくなった私はそのまま「もう夕暮れだよ。早く帰りなさい」と言いました。すると彼女はハッと何かを思い出した様に周りを見渡しました。 そして彼女は私に「ここらへんに友達がいたの。今いない?わたし目がみえなくてわからないの」と、私は周りを見渡しましたが誰も人一人居ませんでした。 私が彼女にいないことを告げると彼女はどうやって帰ろうとまた目に涙を溜め始めました。 「親はどうしたの?」と訊くと彼女は「いないよ。わたしはこじ院にすんでるの」と言って、その時少し心が痛くなったのを覚えています。 |