共鳴 本編 | ナノ


何でも屋 (2/5)


はらはら桜の花が散る季節。
学校へと続くゆるやかな坂の一本道を学生達が歩いていた。


「ん〜良い天気ね。
パリパリの制服を着た新一年生、
仄かな桜の香り…正に春真っ盛り
あ、今日の一時間目は何だたっけ?」

「古典。」

「サボる。アンタはどうする?」

「きちんと受ける…が先生にお前を呼び戻せと言われるだろうな」

「あらあらまぁまぁ」

「春からサボると単位が落ちまくって進級出来なく確率が高くなるが良いのか?」

「それは困るわね…」


困った困ったと言いながらあまり悩んでいない声色で言う、モデルみたいなスラッとした体型の黒髪の女子高校生。


「困ったなら授業を受ける」


女子高校生の言葉に白い髪の男が無表情で、しかも棒読みで言った


「なによー。こちとら眠いのよ?サボって睡眠をとるか悩んでるのに」

「昨日は『仕事』だったんだから仕方ない。心乃原は承知しているのだろう?」

「全く…氷月は手厳しいことで」














で、結局。



「屋上気っ持ち良いー!」

「こうなるのか」


氷月が呟くのと同時に、一時間目のチャイムが鳴った。


「やっぱりサボりは誰か巻き添えにしないとね?氷月。」

「そうか、帰って良いか?」

「駄目。じゃあ私は寝るから見張り宜しく!」

「見張り?」

「この時代、色々と物騒だからね頼んだわよ?」

「解った。」

「有難う。おやすみなさーい!」


そう言って、心乃原はフェンスを背にして座る様に寝始めた。

暫くして、心乃原が完全に眠った後氷月が隣に座る。
そして、見張り宜しく!っとは言われたがPSPをポケットから取り出してゲームをし始めた。





ガチャッ

「……ん?」

ゲームをして数分後、屋上の扉が開き一人の男子高校生が入って来た。


『藍色…珍しい髪色だな』

入って来た男子高校生を一瞬だけ見て再びゲームをやる
すると入って来た男子高校生が氷月の前に立った。



「…何の様だ?」

「何のゲームしてるのかなって」

「リズムゲーム。名前は忘れた」

「そう…じゃあ…校則違反だ」


「……!!」

藍色の男子高校生がニヤリと笑うと殺気が流れた。


ガシャアンッ!!

それと同時にフェンスの掛網が千切れる程の強烈な蹴りが氷月と爆睡している心乃原を襲った。


しかし、

「───あれ?」


藍色の男子高校生が不思議そうに首を傾げる。


何故なら自分が蹴った場所に二人は居なかったから


「惜しかったな。」

「……………?」


今さっき聞いた声に後ろを振り向くと自分が蹴った筈の氷月と氷月に姫抱きされて爆睡している心乃原。


「凄いね、どうやったの?」


藍色の男子高校生は心底驚いた様に言った。


「普通に避けただけだ。
─────それにしても」


氷月は壊れたフェンスを一瞥して


「お前人間か?」

「そう言う君こそ。」

「お前は誰だ?」

「2年B組、雲切 雪瀬(クモギリ キヨセ)。
君は確か…2年F組法塚 氷月だったよね?そこで爆睡してるのは2年F組心乃原 謎古」

「まぁ一応そうだが…何故俺等のコトを知っているんだ?」

「僕、生活委員なんだ。
君等は去年からサボり魔として目をつけられていたんだよ。ってか今時ないよね、普通風紀委員って名前なのに生活委員にしてる学校って。」



生活委員…確かここの生活委員は血の気が多い奴が居すぎて暴力沙汰になる事が多いんだったな…

「俺は毎回巻き添え食らってる被害者なんだが…」

「ならそこの心乃原だけ置いてってよ」

「……心乃原を傷つけるのか?」

「僕はね、女だろうと容赦はしないよ」


雪瀬の言葉に無表情だった氷月が眉が潜めた。



「そうか、なら話は別だ」

「………?」


姫抱きしていた心乃原を再びフェンスを背にして座る様にさせ、雪瀬に向き直る



「悪いが、そう言う事なら俺が相手する」

「僕とケンカするって事?」

「まぁそう言う事だ。」

「じゃやろう「はい、やらないわよ。」……?」

「あ。」


のんびりした女性の声に二人は自分達の間の人物を見て、雪瀬が頭に?マークを浮かべ、氷月はすっとんきょうな声をあげる


「だから言ったでしょう?
この時代色々物騒だからねって」

「心乃原、起きてたのか」

「全く、二人が騒がしいから全然寝れなかったわ。
さて貴方は生活委員だったわね」

「僕の事知ってるの?」

「自慢じゃないけどこの学校の生徒の名前、全部覚えてるわ」

「ふぅん。じゃあもうサボらないでくれる?そしたら反省文で勘弁してあげるよ」

「悪いけど嫌だ。」

「…………じゃあ制裁だね。」

「それは嫌だなー氷月帰ろ」

「解った。」


ツカツカと雪瀬の横を通り、階段へと向かう二人。


「ちょっ…」

「痛いの嫌だもの」

「俺も」

「と言う訳でまた遇いましょう雪瀬」

「………え、…って居ない」



つい先程まで目の前に居た二人が気付いたら居なくなっていた。

ドアノブに手をかけてなかったのに音一つ発てず。


「……変なの」


雪瀬はただそれしか言えなかった




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