共鳴 本編 | ナノ


水面 (2/6)

―――――――――


『…氷月さんが刀で水しぶきをたたせた時になんとか心乃原さんに化けることが出来たけど…大丈夫かな…』


ちらっと心乃原に化けながら灰々が氷月を見るとまさに一騎当千。見習い悪魔を簡単に蹴散らしている。さらに部隊長の黒枝も苦戦している様でこちらには見向きもしていない。


「流石、ザフキエルとカマエル…闘いに優れた天使が就く役職を掛け持ちでやるだけありますね」

「なんとでも言え」

「――――――!」


黒枝の刀を木刀で払い、容赦なく膝蹴りを彼の鳩尾に叩き込み、よろめいたところですかさず黒枝の首ぴったりと木刀を当てる氷月。

それと同時にまだ倒れていない部下達の動きも止まり辺りに静寂が広がる。

剣圧で目深に被っていたフードが落ち、黒枝の悔しそうな顔が見えた。実際、悔しそうに八重歯で自分の唇を噛んでいた。


「勝負あったな」

「…参りました。氷月様」

「素直に敗けを認める奴は正直者だ。嘘つきはだいたい死ぬ。良い筋だし、これからも鍛練に励めよ」


木刀を首から降ろし、無表情だった氷月の口元が少しだけ緩んだ。





「そぉだよ〜黒枝くん。これからも頑張ってねぇ〜」


「!?」

「そ、そのお声は…!」


のんびりした少年の声に、氷月と黒枝は振り向く。服の袖に小さな鈴をつけている少年は鈴の音を鳴らしてにこっと微笑み、心乃原に化けた灰々に視線を送る


「君、噂の禍い者の狐でしょ?なにもしないから変化を解きなよ〜」

「え、氷月さ…」

「解け」


灰々が心乃原に化けていたことを見破ることが出来なかった黒枝が驚くのを他所に、氷月は灰々の言葉を最後まで言わせずに答えを行った。

ぽんっと音を発てて術を解くと、灰々は氷月の傍につく。


「あの方は誰ですか…?」


何処か緊張した空気の中、灰々が氷月に訊くと少年が一歩前に出る。


「そんな緊張しなくて良いってばぁ〜俺も仕事サボって来たんだしね!」

「…何故で御座いますか」

「やっと来た彼に逢いにだよ。彼とユウちゃんと心乃原ちゃんは三途の川に行ったのかな?氷月くん」

「あぁ。貴方も行かれるのか?ルシファー」


ルシファーという言葉に灰々は目を大きく見開いた。
ルシファー…悪魔を取りまとめる者でミカエル、閻魔に並ぶ力の強い者。

そんな偉い存在が何故此処に。
と、ここにいる者は皆心の中で思っていた。


「もちろんっ!彼は大事だからね〜挨拶はしないとだよ!」


天使の様な笑みで、悪魔を取りまとめる役職に就いている少年は言う。




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