共鳴 本編 | ナノ


繋がり糸 (3/5)


酔った感覚から抜け出し、目を開けたらそこには僕が今まで見たことない風景が広がっていた。

そこは灰色のコンクリートの様なもので補正された道が一本真っ直ぐと続いているだけであとは真っ白で明るい世界。これがさっき心乃原と法塚と、あとユウって奴が言っていた魂流界ってところの裏側なのかな。

隣にいる灰々もあちこち周りを見ていた。
それより、なんだろう…この感じ。
僕はここを知っている様な、懐かしい感じがする。


「さて…雪瀬、ユウ、あと30分ぐらいよ。此処に渡る時は一瞬だけど実は30分ぐらい時間が経ってるからねぇ」

「はいなっ!」


心乃原の言葉にユウは少し車のスピードを上げた。果てがない道をずっと進む。はっきり言って有り得ない世界だ。なのに、僕は何も動揺してない。不思議だな。


「…そういえば、僕は何をすればいいの?何か役目があるんだよね?」

「勿論。貴方の身代わりになった魂を捜すのは貴方自身にしか出来ない。私達は今全ての魂が行き着く川…俗に言う『三途の川』に向かってるわ。そこに着いたら貴方は川に飛び込み糸と勘を頼りに身代わりなった魂を見つけ、貴方自身と同化させるの」

「そしたら生き返れる…?」

「そう。でもね…その前にちょっと問題が―――「全員どっかに掴まれ!!」


心乃原の言葉を遮りユウが声を張り上げる。僕も他の奴等もどこかに掴まった。それからすぐに、後ろからドドンッていう何か爆発した様な音。それをユウはバンドルを切り替えたりして(前があまり見えないからよく解らないけど)車を巧みに操作してそれを避けつつ進み続ける。


「やっぱり来やがったが…」


苦々しくユウが言う。心乃原もため息をついていた。


「な、何者ですかあの人達…!」


僕が後ろに振り向いて見る前に、灰々が既に見ていた。続いて僕が見ると…何あれ。


「黒い羽生えてる…?」


そう、正にそうだ。カラスみたいな黒い羽で低空飛行している奴もいれば空を飛んでいる奴もいる。そいつらの手には銃やら剣やら槍やら、何かしらの武器が握ってあった。


「チッ先回りされた!」


ユウの大声でまた僕と灰々が前に振り向くと、数十メートル先に黒い羽を生やしてる人物がメガホンを持って「止まれ!」って大声で言ってる。車が近づいてきているのに動かない。


「捨て身覚悟か」


ボソッとこの世界に入ってきてから初めて法塚が喋った。するとユウは「仕方ねぇな」と言って車のスピードをゆっくりと落とす。やっぱり、轢くのは嫌だよね。相手が捨て身覚悟でも轢くのはダメだ。轢かれた側は凄い痛いし。さっき体験したから言えることだけど



「仕方ねぇ…が!」


ぐいっと後ろに引っ張られる。

え?スピード上がった?


「今はもっと仕方ねぇんだよ!!」



ドカッ!!


…………思いっきり轢いた。

この時、ミラー越しに見えたユウの楽しそうに輝いていた目はきっと暫くは忘れられないな。



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テーマ「人外ファンタジー」
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