繋がり糸 (2/5) まず当然運転席にはユウが座り、助手席に心乃原、そして後ろに灰々を真ん中にして俺と雪瀬が座る。車内は意外と広くて三人でも余裕に座れた。 「心乃原姐さん、今回は何処までですかい?」 「魂流界の裏側、魂が流れ着く川よ」 「マジか。やっぱり心乃原姐さんはやることがデケェなぁ。でもそっちの方がやりがいあるし、面白ぇ」 にやり、とまたユウは口元を緩ませるのを前に着いているバックミラー越しに見えた。それからユウは車のエンジンをかける。 「魂流界の表側、閻魔がいる所は言霊さえ使えりゃ簡単だが今回は裏側。言霊を使わなくても行けるが戻るのは難しい。さらに今回は普通の人間着きで人間界の車を連れていくから荒っぽくなるぜ!」 「どうやって行くんですか?」 「簡単だわ、ユウは運び屋よ?だけど今回は時間が惜しいから早くいかないと…【発】」 「ちょ、」 そう心乃原が呟くと雪瀬の心臓辺りから白い糸が出てきた。それは車の窓をすり抜け何処かへと繋がっている様に見える。つまり、これがここにいる雪瀬の魂と雪瀬の身代わりとなって魂流界へと逝ってしまった魂を繋ぐ糸だ。雪瀬はそれを恐る恐る触る。 「あまり引っ張っちゃ駄目よ〜魂飛び出ちゃうかもしれないから。ユウ、糸を追って。それが今回の魂流界への最短ルートよ」 「はいなっ」 「そう言えば…僕、あまり時間が無いんだよね?あとどれぐらいなの?」 座っている俺から見て右側、つまり運転席の後ろに座っている雪瀬が、真ん中に座っている灰々の頭を肘置きにし、前に身を乗りながら言う。 「そうね…一時間かしら」 「短っ」 「そりゃそうよ〜今貴方には有り得ない現象が十重二十重に張り巡らされてるんだから」 「そろそろ入るぜ」 車は雪瀬の糸を追い、確か行き止まりだった筈の角を右に曲がったところでユウは呟いた。 それと同時に一瞬だけ少し車に酔う様な感覚。もう何百年も彼方と此方を往き来しているがこうやって無理矢理往くのはどうも慣れない。 当然記憶を亡くす前は知らんがこういう行き方をした灰々は勿論、死んでもいない人間の雪瀬も酔った様に手で口を抑え、それから自分の目に写った光景に目を大きく見開いていた。 |