〇〇屋 (4/4) 「寒い…」 「まぁ我慢なさい、すぐ来るから」 場所は変わって家の玄関前。死装束という薄手な服装の雪瀬には少しキツイ肌寒い夜だった。 「そう言えば、今の僕って普通の人間には見えないの?見えたらめっちゃ恥ずかしいんだけど」 たった今家の前を通過した車を見ながら雪瀬が心乃原に訊く 「見えないわよ〜さて、そろそろかしら」 心乃原が自分の腕時計を見る。そして丁度零時なった時、 「来たわね」 目の前はに映画に出てくる買ったばかりの新品の様な黒光りな乗用車があった。 「え、いつの間に…!」 「相変わらず、時間ぴったりだわ〜久し振り」 突然現れた車に灰々が驚きの声をあげる。 そして、車の扉が開いた。 「そりゃあ心乃原姐さんの頼み事となれば何してたってすっとんで向かいますよ!」 現れたのは長い黒髪を左の上できゅっと結び、スーツを着ている女性。外見に似合わず明るい声だ。 その人物に心乃原は懐かしそうに顔を綻ばせる。 「本当にありがとう、運び屋ユウ」 「はいなっ!心乃原姐さんに運び屋って言ってもらえるの嬉しいぜ!あ、氷月まだ心乃原姐さんに引っ付いてんのか。久し振り!」 「久し振り、相変わらず余計な言葉が多いな」 「ちょ、ちょって待ってください!運び屋って…?」 灰々の問いに、心乃原達は話を一回中断した。ちなみに雪瀬はそれを傍観をしている。そして、ユウと呼ばれた女性はニヤリと心乃原の笑みに近いモノを顔に浮かべると灰々に近づいた。 「ふーん。お前が最近有名な狐か…もやしみたいだな」 「うっ…」 「まぁ良いや、アタシにゃ関係ねぇ。じゃあ改めて自己紹介しなくちゃな」 「新聞から危ないモノまで、金さえ払えば世界の果てまで運び、命を払えばあの世まで普通の人間には運べないモノを運ぶ、通称運び屋ユウだ!よろしくなっ」 了。 |