共鳴 本編 | ナノ


〇〇屋 (3/4)



「そうねーまずは、今の貴方の状態を話そうかしら。
人間はね、死ぬとまず身体から魂が抜き取られて死装束を身に纏い魂流界に行くの。だけど何故かそうならないで死んだけど身体から離れられない、でも身体は傷やらなんやらで死んでるから動かせない。それを『仮死』って言うの。今の貴方はそれに近い状態ね」

「じゃあなんで今の僕は…」

「貴方の身体は轢かれてすぐに傷を治したの。貴方の意識が死んだと認識する前にね。あ、やり方は秘密よ。氷月にも灰々にも言ってないんだから!」


秘密中の秘密なのよ!と大袈裟に心乃原は言う。そこに氷月が「いつの間にかお前を心乃原が連れてきたんだ」と付け足した。

…よく解らないけど心乃原は変な奴等の中でも更に変な奴なんだな。とにかく、


「僕はこれからどうすれば良いの?しかもその仮死?に近い状態ってどーいうこと?生き返ったの?死んだの?ハッキリ教えてもらいたいな」

「『完全には生き返っていない、でも完全には死んではいない状態』よ。話はちょっと変わるけどね、貴方の中には貴方自身が死なない様に身代わりになった魂があるの」


心乃原の言葉に頭に?を浮かべる雪瀬だが心乃原はお得意の超マイペースでそれを無視、話を続ける。


「その魂が身代わりになってその魂だけが魂流界に逝ってしまったの。でも身体と魂は糸で繋がっているモノ、魂が2つあれば魂2つと身体が糸で繋がっている。
つまりね、逝ってしまった魂は『とりあえず生きてる貴方』とまだ繋がっている。その魂をまた貴方にくっつければ完全に生き返ることが出来るの」

「理由はどうあれ僕のもう1つの魂を取り戻したら生き返るってこと?」

「そう。話が解ってくれる子で助かったわ」


「そりゃそうだよ。僕自身におきてることだし。それに…?」



不意に雪瀬が紡いだ言葉。自分で言おうとしたわけじゃないのに、勝手に身体が言わせた様な感覚に思わず口に手をあてる。

更にそれと同時に流れる映像。僕は小さな子の隣にいる。その子は僕と目が合うと嬉しそうに笑っていた。僕はやれやれと呆れながら満更でもないような感じがした。


「雪瀬…?」

「!!」


しかし灰々の心配した声で現実に引き戻された雪瀬。ピョコピョコ動く獣耳にも大分馴れてきた。


「君に呼び捨てされるなんてね」

「え、」

「まぁ良いけど。で、僕はこれからどうすれば良いの?僕のことだ。僕がやらなくちゃ。死ぬの嫌だし」

「勿論、嫌と言ってもやらせるわ。最終的に貴方が居なくちゃいけないもの。まずは、外に出るわよ。氷月と灰々も来なさい」


心乃原が真剣な低めな声色で言う。低めで小さい声なのに相手の頭に響き腹にたまる様な声に思わず灰々と雪瀬は一瞬だけ硬直してしまう。


「行くぞ。灰々、雪瀬。雪瀬は死装束のままで良い」

「は、はい!」

「…解った」


だが長い間心乃原と行動を共にしている氷月は何も動じずに硬直状態な二人に話しかけ、それを無感情な声で叩き割った。




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