初日 (5/6) 「つまり灰々には――――――「いやぁああああっだから手品ですってばぁあああっ!」「嘘つきなよ。」「やぁぁあああああああっ!」―――――――――?」 人がいない校庭のベンチに座っていた氷月が聞き覚えのある二人の声に反応して後ろを振り向くと、灰々に小石を投げながら追いかける藍色の髪の男子生徒。 心乃原はそれをわざとらしくあらあらまぁまぁと言ってクスクス笑いながら見た。 「灰々…と確か雲切雪瀬…?」 「氷月さん!」 氷月を視界に入れた灰々の表情は涙目でその表情を見てゲッ…と小さく呟くも、灰々はたたたたーっと持ち前のすばしっこさで氷月の後ろに回る。 「この…っ!あ、」 藍色の髪の男子生徒…雪瀬は灰々に向かって小石を投げたはずだったがその前に灰々は氷月の後ろに隠れてしまいその小石が氷月に当たりそうになる。 が、 「石なんて駄目だろうが」 簡単に氷月が受け止めてしまった。 「小石なんて生ぬるい。やるなら徹底的にやれ」 「そっちの意味ですか!?」 「あら〜また遇ったわね、雪瀬!」 さらに灰々の後ろから黒髪を揺らして心乃原が飛び出てくると雪瀬はチッと舌打ちをした。会うのが面倒くさかったのが嫌でもうかがえれる舌打ちだった。 「君等と会うのは仕組まれてる様な気がするけど…まぁ良いやなんかそいつ手品とか言って変な耳出してたんだけど、知り合い?」 「知り合いも何も親戚よ〜一緒に暮らしてるもの。あ、どうせだから一緒に昼御飯食べる?」 「……要らないよ。君と話すと疲れる。じゃあね」 「待ちなさい、雪瀬」 「?」 心乃原が声色低めで、まるで言霊遊びをしている時みたく真剣な口調で背を向けた雪瀬を引き留める 「なに?」 「帰り道に気を付けなさい」 「は?」 「世の中物騒だからね!」 神妙な顔つきになったと思えば笑顔で言う心乃原に雪瀬は訳が解らず眉を潜めた。ころころ変わる心乃原の表情と声色に厭きれ、同時にどう返事を返せば良いか解らない 「…よく解らないな。今度こそバイバイ」 「バイバーイ!」 手を振って言う心乃原を一瞥してから雪瀬は学校の中へと帰る。灰々はまだ氷月の後ろに隠れていた。 「灰々、離れろ。」 「はっ!すみません!にしても…何ですかあの雪瀬って人!気配だって声かかるまで判らなかったし…」 「俺もいまいち判らない。一度軽く相手をしたが人間とは思えない馬鹿力だった。アイツは一体何だ?」 「んなことより早くお弁当食べましょうよ!今日は予定通り雪瀬に遇えて良かったわ〜灰々に遇っちゃうのは予想外だったけど」 「「??」」 頭に?を浮かべる二人を他所に、心乃原は弁当箱に入っている卵焼きを箸で掴んだ。 「雪瀬は今日死ぬのよ」 「は?」 「えっ?」 そしてさも当然の様にあり得ない言葉を言い、ぱくっと卵焼きを食べてから美味しいー!と幸せそうに言った。 |