初日 (4/6) 「本当だ…誰も居ない」 心乃原さんに言われた通り体育館裏に来てみたが本当に人一人いなかった。 周りも木に囲まれて日があまりあたってないし、正直言ってよくない気配がする。近くに悪い妖怪でも居るのかな… まぁ確かにここなら誰にも見られずに耳を出せるよね。耳を出したらすぐ戻してさっさと戻ろう。心乃原さん達を待たせるわけにはいけないし。いや、あの人達なら僕を待ってくれるわけないけど 「人は本当に居ないな。」 狐なせいか音や気配には敏感だから人間とかが居ればすぐ判る。それは耳を隠していても同じ。最後にもう一回周りを確認して耳を出した。 「んー!やっぱり出さないと落ち着かないな…あー辛かった。」 その耳を出した状態で背伸び、あと耳を数回動かす。本当は尾も出したいけど制服だし。でもこっそり制服に尾を出すところでも作っちゃおうかな。裁縫は得意だし 「ね、君」 「はい?」 「その耳、何?」 「…………………………はい?」 制服に尾を出すところでも作ろうかと考えていたら突然の声。振り向けば、そこには黒に近い藍色の髪の男の人 訝しげにこっちを見ている。 あ、耳…隠さないと…………!?ちがうよもう見られてしまった!? 思わず自分でも不自然だと感じる程速く耳を隠してしまい男の人の顔が余計に訝しくなった。 「あ、引っ込めた。なにそれ」 男の人が氷月さん並みの無表情で訊いてくる。 「え、えと…て、手品…で…―――ひぃっ!」 僕の言葉を遮って、男の人は小石を僕の顔すれすれで投げてきた。なにしてくれんですがあの人!!あの人、本当に人間!? 「――で?なにって訊いてるじゃん」 男の人の手には小石。先が尖っていて当たったら痛そうだなー…絶対痛 ビュッ ――――チリッ 今、頬にかすりました。痛いです。 「て、手品ですってばぁぁあっ!」 |