初日 (1/6) 「灰々、ネクタイ結べないのか…?」 「僕は初めて制服を着るんですよ!そんな哀れみの目で見ないで下さい!」 「はいはい早く行くわよー!もう遅刻なんだからって、あら?灰々ネクタイは?」 「だ、だから…だからぁ…」 場所は変わって学校。 ガヤガヤした教室の教卓の前には見目麗しい妙齢の女教師、そして心乃原と氷月の担任の朝菊 陽子が今まさにホームルームを始めようとしていた、 「と言うわけで!朝のホームルーム始め…」 「すみません朝菊先生!遅れましたっ」 「遅れました。」 「まーたお前等か。」 制服を着た心乃原と氷月が扉を勢いよく開けて教室に入ると朝菊が呆れた様に言った。 「転入生連れてきたのにその言い方はないでしょ?」 心乃原の言葉に回りの生徒は騒然。ガヤガヤが余計に増す。 「私の親戚なの。入って!」 「は、はい!」 ガララッと扉を開けて入る灰々。獣耳と尾は神経をすり減らしてなんとか見えない様にして、一番小さいサイズの制服を着て、緊張しながら入るとその少年よりの容姿に女子が『きゃー』とか『わー!』とか言って拍手喝采をした。 「は、初めまして!灰々壬里と申し…言います!宜しくお願いします。」 心乃原さんがなるべく丁寧すぎる敬語はだめだと言っていたからなぁ…と思いながら慣れない口調で挨拶をして、灰々は心乃原の隣の席に座った。 「灰々はご両親が不運な事故で突然お亡くなりになってしまい急遽親戚の心乃原と暮らすためにこの街に来たらしい。だからまだ解らないことばかりの灰々には皆、色々と教えてやれよー」 「昼に戦場化する購買についてとかですか?」 男子生徒がふざけながら言う。 すると朝菊はニヤリと、心乃原のそれに近い笑みを浮かべる。 「そーだ。あと授業のサボり方とかな」 教師の言うことじゃない。 朝菊の言葉に灰々は苦笑いしながら胸で呟いた。 |