言霊遊び (5/6) 「今のは何ですか!?相手の攻撃ですか!?」 「言霊遊びでは肉体を攻撃するとその証拠にあの帯が傷口に巻き付き、勝手に傷を治す。人ならざる者は何かしら大切な役目を持っているから試合で相手を殺したり死んだりするのは駄目なんだ」 「なら… 「だが、」 氷月の言葉が灰々を遮り、灰々は不思議そうに氷月を見返す。 「肉体的、精神的ダメージは変わらない。そういえば言ってなかったな…詳しい言葉遊びの勝ち方を。言葉遊びでは肉体的ダメージには『白い帯』、精神的ダメージには『鎖』が体に絡み付く。勝ち方は相手にダメージを蓄積させてあの帯で完全に『拘束』することだ。」 「拘束?」 「まぁ…見てれば解る。が、今回はそうはいかないかな」 「???」 「独学でここまでやるなんて予想していた以上ね、凄い。だけど兵を前に出さなかったのは駄目ね。大きなダメージを私に与えるチャンスだったのに。そろそろ、終わらせるわよ」 心乃原が左手を挙げる。それと同時に狛犬二人は身構えた。 【離脱。】 「「は?」」 「えっ?」 心乃原が紡ぐ言葉に狛犬二人と灰々が気の抜けた声を出した。 しかし心乃原は紡ぎ続ける。 【逃がして】 【この小鳥を】 【枯らさないで】 【この若葉を】 【摘み取らないで】 【この新しい芽を】 「――――まさか…!」 「兄者!?」 何かに勘づいた兄は焦りなから心乃原を妨害をするために刀を握りダッと駆けだす。 「良い判断ね、本当にあなた達摘み取るのが惜しいわ。だから…」 そこでやっと妹も勘づき急いで口を開くが心乃原の方が速かった。 【優しい春風よ。あの狛犬を主人の元まで運んであげて】 「なっ、」 「卑怯だぞ!」 兄の言葉を心乃原は「何でもどうぞ。」と愉快そうに応える。 そして刀を握っていた兄と心乃原を阻止する言霊を紡ごうとした妹を囲むように刃の様な風とは真逆な角がない暖かい風が包み込んだ。 「小鳥みたいでしょう?あなた達。 ちゃんと言葉とルールを覚えてからまた挑戦しに来なさいな、いつでも受けてたつわ。」 そう行って最後にパチンッと心乃原が指を鳴らすと風の音が強くなり、狛犬二人は消えた。 【結果は引き分け、此れにて言霊遊びを終了致します。】 【籠解除】 |