言霊遊び (3/6) 『ではいざ』 【言霊遊びを始めます。】 奏者の二人が開始の言葉を言うとキィィンッという耳鳴りに近い音が籠の中に響いた。 「妹、行くぞ」 「はい兄者」 そう言って先制の狛犬二人は互いの手を合わせる。 「私たちの名は『双輪』」 「俺たちの意味は『一心同体』」 ふわっと狛犬二人の回りに不自然な風が吹き、二人の髪を揺らした。 「……………………。」 心乃原はそれを面白そうに見る。 そして狛犬二人は合わせていた手を離して心乃原を見据えた。 「では攻撃を開始する。 『切り裂け!』 ――兄者もお願いします!」 「解っている」 妹の言霊で風の刃が心乃原目掛けて飛んでくる。そしてその刃の間を掻い潜り、兄が心乃原に直接攻撃をするために駆けた。 その中で兄は小さく呟く。 『武器装備、刀』 すると兄の手に刀が握られていた。 それを籠の外から見ながら氷月の無表情だった顔の眉が僅かに動く 当然灰々はそれ以上に驚いていた。 「勝手に刀が…」 「兵のみに許される言霊、『武器装備』だ。兵なら好きなタイミングで武器を装備、交換できる。だが普通武器を装備する時には隙が出来るのだが…あの狛犬、余程練習したんだな。だが…」 妹の言霊と兄の一閃が心乃原を襲う。 そこで心乃原はニヤリと口を緩めた。 「―――――心乃原には敵わない」 【引き付け】 心乃原の言霊でぐいっと胸ぐらを掴まれた様に無理矢理彼女に近づいてしまう兄。そこでバランスを崩した。が、すぐ体制を整え、刀を振りかざす。 だが心乃原は悠々とした態度でそれをかわさない。逆に刀に向かって手をさしのべた。 【反射】 【防御の盾】 【私に風は届かない】 【反転】 【全てを返す】 【刀の攻撃さえも】 たちまち攻撃を否定した心乃原と刀を振りかざしていた兄の間に防御壁が出来始める。それを視野に入れた妹の方は急いで新たな言霊を展開。 『否!そんなことは… 【認める。そんな安っぽい言葉なんか私に届かない!】 だが落ち着いた声色から急に凛とした声色に変わる心乃原の声で妹の声はかき消され、防御壁が完全に完成して妹の風の刃と兄の一閃は弾かれ、防御壁も崩れた。 「次は私の番よ。 【私を守った壁の欠片を集まれ、二人を攻撃しろ】」 今崩れたばっかりの心乃原が出したガラスみたいな破片が集まり、それが狛犬の妹とは違う目に見える刃となって二人を襲った。 |