目が見えない人の願い[後] (6/6) 「心乃原さん達は、毎回あぁいう願いを叶えていらっしゃるんですね…」 客と別れて、家へ戻る道を心乃原と氷月の後ろを歩きながら突然灰々が言った。 「まぁね。でも中にはもっと難しい願いの人もいるわ。だからこそ人間は面白いのよ。」 「…そうですか。」 「話を変えて悪いが…心乃原、もう8時だが大丈夫か?」 「え?」 「学校。灰々も転入させるのだろう?」 「えっ…本当ですか!?一体いつの間に…」 氷月の言葉を聴いて、灰々はとても嬉しそうに後ろからたたたっと走り二人の間に入って心乃原の方を見る。そして心乃原は楽しそうににやにや口を緩ませていた。 「えぇ、そうよ。昨日急いで手続きしたの、だから――――!」 突然、心乃原が言葉を中断して後ろを振り向き氷月も後ろを振り向いた。 『領域展開。』 『標的、灰々 壬里』 『烈風!!』 それと同時に知らない若い女の子の声が三人の耳に響く様に入り、地面を斬りながら見えない何かが灰々目掛けて襲ってきた。 「言霊…!? 【拒否します!!】」 しかし心乃原が灰々の前へ立ち、手を前に出して風を掴む様な仕草をすると、鋭い何かは消えて風向きに合わない風が三人をそよいだ。 「今のは言霊ですか…!?」 「だな。」 驚きのあまり隠していた狐耳と九本の尾が飛び出てしまった灰々の問いに氷月が応える。一方心乃原は風が吹いてきたところを暫く見つめ、口を開く。 「出てきなさい。朝から言霊を使うなんて…ご近所迷惑でしょう?」 心乃原の言葉に道路の曲がり角から人が現れた。一人ではなく二人。一人は女の子でもう一人は男の子。しかも頭には獣耳。どこからどう見ても人間ではなかった。 その二人を見て心乃原は何処かに仕えている狛犬ね。と呟く。 「兄者、あの女、私の言霊を拒否しました。」 「しかも領域展開を破棄したな、凄い。」 「ただ者では」 「ないな。」 交互に、まるでテレパシーで繋がっているかの様に話す狛犬達。 隣で状況を把握出来ていない灰々をよそに氷月は遅刻決定だと胸の中で呟いた。 了。 |