目が見えない人の願い[後] (4/6) 『やっと、君の目に私が写った』 耳に入ったのは優しい声 見えない筈の目に写ったのは黒髪で私と似ている淡く薄い桃色の羽織を羽織って、中は真っ白な和服を着ている青年 やっと、やっと貴方を… 「やっと、貴方を見ることができた……!」 ずっと見てみたかった彼、それが今目の前にいる。目に写っている。 嬉しくて涙が溢れてしまった。 『不思議だね、枯れかけているのに君の声を聞いたら人に変わることが出来てしまった。』 「…本当に不思議…夢じゃないのね?」 『夢じゃないよ。なぁ、最期に言いたいことがあるんだ聞いてくれるかい?』 最期? やっと見える様になったのに貴方はもういってしまうの? 「なに…?」 そんなの、少し嫌だな。 だったら聞きたくない でもそれが彼の願い 『貴女は私の大切な人です。貴女のおかげで少し退屈で長い時間が満たされた。有難う、本当に有難う。』 そう言った彼の体がだんだんと花びらが散るように彼自身が花の様にはらはらと散っていく 「…………いってしまうのね?」 私の問いに『あぁ』と彼は言って小さく困った様に苦笑する。 『でもだからこそ……最期は貴女のためだけに咲いて散りたい』 再び彼は私を抱きしめて、私の耳元で囁いた。 意味が解らなくて、いや解りたくなかったのかもしれない。彼の顔を見つめると彼は散りかけた手で私の手を握ってくれた。 昔もよくしてくれたなぁって…思い出してしまう。 だったら私は応えないと 「―――有難う、さよなら」 少し涙声になってしまったかもしれない。でも別に涙を流すのが悪いわけではない。涙を流しながらでも、それでもきちんと彼に別れを告げたかった。 彼の頬にも涙が一筋流れていた。 『さよなら、でもこれはきっと』 一生の別れではないよ。 そして彼はとても優しい笑みを浮かべて私を包み込む様に抱きしめながら数百枚の花びらとなって散っていく。 この時の光景を人に説明しようとしても無理でしょう。 それほどまでに言葉では表せないほどまでに、彼は美しく咲き、散ったのです。 |