目が見えない人の願い[後] (3/6) 何故かしら 目が見えないからなのかしら 全て、何となく解っていたの。 貴方が人では無いことを 貴方がいなくなることも 二年前、貴方は突然消えてしまった。でも貴方の気配はあの場所に在った。桜は枯れかけていた。 貴方が私に逢いたくない理由もすぐに解ったの。 貴方は私に昔から優しくしてくれた。 声しか判らなくても、姿が見えなくても貴方は素敵なお方だったと胸を張って言えます。 貴方のために、私は貴方の気持ちを尊重しようと貴方に逢いたいという気持ちを消そうとした時期もあります。 でも、無理でした。 私は我儘な女です。 そして最期にただ逢うだけではなく、貴方の姿を見たいと願う様になってしまいました。 だから私は不思議なお店で願いを叶えてもらう事にしたの、自分の命を払うとしても 「その声…貴方なのね…」 時間より少し早めに来てしまったら彼が店主さん達と会話しているのが聞こえた。彼があの人達に私との思い出話をしてくれたところもきちんと聴いてしまった。 店主さんが小陰に隠れていた私に気がついたらしく、私は押し止めていた気持ちを声に出しながら杖を頼りに彼の傍に近づく 『そうだったんだ…私は人ではないよ。ずっと君を騙していたんだ、すまない』 「そんなのずっと前から解っていたわよ。」 あと少しで彼の傍へ着ける。 彼が申し訳なさそうに謝ったけどそんなの私は何も悪くは思ってない。私は小さく笑いながら彼に向けて言った。 「有難う、私は貴方のおかげで今とても幸せです」 彼の元まで、後一本。 後一本踏み出せば、彼に触れられる。 『―――――――!』 「!!」 彼に触れようとしたら突然、彼が私の名前を呼んで私は驚く。 それと同時にざわっと木が揺れる音がして、 「……………あ、」 ………とても良い桜の香りがした 私はいつのまにかその香りに包まれていて、何かにぎゅっと抱きしめられる。私もそれを抱きしめ返す。 すると、私の目に不思議なことが起きた。 真っ暗だった世界がゆっくりと色を帯びてきて…そして私の目に写ったのは――――――――――― |