共鳴 本編 | ナノ


目が見えない人の願い[後] (2/6)





このまま彼女を一人にさせてはいけない。

そう思った私は禁忌を犯すのを承知で人の姿になりました。
きちんと、人間が私のことを見える様に。二年前の私にはこれぐらい容易に出来たのです。



そして人の姿になった私は彼女の手を繋ぎ、彼女に道を教えてもらいながら彼女が住んでいた孤児院へと向かい送りました。





それからと云うもの毎日彼女は私の元へ来る様になり、私も彼女が目が見えないのをいいことに人の姿になって彼女と話をしていました。


しかし私は桜、春にしか咲くことが出来ない。つまり人の姿になれるのも桜が咲いている数日だけ。

なので彼女には

『私は遠くに住んでいるんだ。でも私はこの桜が大好きだからこの桜が咲いている時だけ来ている』と言っていたのです。


そんな風に、彼女とは毎年私が咲いて数日間だけ顔を合わせていただけだったのにいつしか私にとってかけがえの無い人になりました。




最後に桜は悲しそうに消えそうな声で、全てを語った。

僕と心乃原さんと氷月さんはそれを黙って聴いていた。





「何故、二年前までなの?」


語り終わった桜に心乃原さんが訊ねる



『始まりがあれば終わりがある様に生あるものには死があるのですよ。二年前から私の力は急激に減りました。…私はもう長くない。今年で長い人生を終えるのです』


えっ…


「そんな…っ!そんなの悲しすぎます!!」


桜の言葉につい僕は口を出してしまった。
すると桜はクスリッ…と小さく笑うように枝を揺らした


『悲しんでくれて有難う、狐の少年よ。しかし私はもう十分に長い時を過ごしました。……心残りな、ど…』


「あるでしょう?」


桜の途切れかかった言葉に心乃原さんは間髪入れずに言う。…やっぱり心乃原さん容赦無い。でもこれは悪いことではないと思うな…

強いて言うならこれは心乃原さんの真っ直ぐ過ぎる優しさ
真っ直ぐ過ぎる優しさは、最初はとても痛いと思う。でも後でじんわりゆっくりと体を暖かかくするんだ。



「最期に彼女に逢いたいんでしょう?…彼女は何となく貴方がいなくなることを悟っていたわ。最期ぐらい、我儘になっても良いと私は思うわ」


『…………………………。』


「と、まぁそうこうしている内に……………彼女が来たわね。」



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