目が見えない人の願い[中] (5/5) 『?』 「彼女は命を払ってまで貴方に逢いたいと私に依頼をしてきたの」 『な、何故…』 「それは自分で訊きなさい。 人間の命は私達から見ればとても短いでしょう?その命を彼女はもっと短くしてまで貴方に逢いたいって言ってきたの。その彼女の願いを無下にしないで」 幹を撫でる様に触れていた手に力が入ったのを僕は見た。 心乃原さんが真っ直ぐと幹を見つめて長い長い大切な言葉を紡いだ。 ざわっ… 数秒後、風なんか吹いていないのに木が揺れる音が僕の耳に届く。 『――――――あ、あぁぁ…』 それから心乃原さんの言葉が胸に刺さったのか、桜はざわざわと幹を、枝を揺らして泣き崩れる様な音を鳴らす。実際、泣いているのかもしれない 『…………そうなのですね、彼女は…』 「良ければ経緯を話してくれる?まだ時間はあるわ」 『―――――――――勿論です。誰かにこの思い出を伝えたい…ずっとそう思っていました。 話しましょう、彼女との経緯を』 桜は静かに語り始めた。 了。 |