目が見えない人の願い[中] (4/5) 「え……」 何処から?そう思って急いで周りを見ても、僕と心乃原さんと氷月さんしかいない。 『あなた方は誰ですか?』 再び同じ問いをしてくる何か 「依頼を受け持った者よ。」 また木の幹を撫でながら言う心乃原さん。 もしかして、やっぱり… さっきから予想はしていた。 でも、それはあまりにも… 「この木、ですか?お客様が逢いたい人って…」 目を閉じて小さく頷く心乃原さん 『あなた方は何ですか?』 体が無い何かの問いが誰から何に変わる。その声は何処か嬉しそうに聴こえた。そりゃあ僕らや貴方の様な存在は同じ種族となら話す事は出来るけど、人と話す機会があまりないもんね。人と話すのは凄い嬉しいよね、楽しいよね。 僕も昔からそうだった。 「…………昔から?」 僕、今何て言った? 昔?記憶を無くす前の僕? 「灰々?」 「あ、…いや何でもないです!」 氷月さんの言葉で僕は現実に引き戻される。そうだ、今は自分のことよりこの依頼のことを考えなくちゃ 「そうね…まぁ平たく簡単に言えば私達は人間ではないわね」 『そうですか…では、こんな枯れかけた老木に何の御用でしょうか?』 「貴方に逢いたがっている人がいるの」 『……………………!!』 「逢いたがっている人がいる」と言う言葉に反応して突然、ざわっと風が吹き抜けて、枝を擦った様な音が桜から鳴る。 桜が驚いているのだろうか? 「貴方はその人物に心当たりがあるのね?」 桜が落ち着いてから心乃原さんが訊ねる。 『えぇ…勿論です。彼女は、私の大切な方なのですから』 「彼女は貴方が二年前から姿を現せなくなったと言っていたの。まだ彼女が来るまで時間があるわ、だから―――――― 『彼女が来るのですか!?』 ……………えぇ、そうよ。」 桜が心乃原さんの言葉をさっきより大きな音を発てながら遮る。 なんと言うかその迫力が凄まじい。風さえも巻き起こす音で今は枯れかけた老木だけど、昔は凄い桜だったのだろうな… 『何故、彼女を此所に呼んだのですか!?』 「さっきも言ったでしょう?貴方に逢いたがっている人だからよ。私達は彼女の願いを叶える、それだけよ。」 『………しかし、私はもう彼女に逢えません。こんなもうろくに力も無い老木なのですから』 弱気に、小さな声で彼女に逢う事を拒否する桜を僕と氷月さんは心乃原さんの後ろで聴く。 確かに力が弱ったのなら彼女に逢っても彼女を悲しませるだけかもしれない…と桜は思っているんだろうな その時、氷月さんが「あ…」と声を漏らした。 「氷月さん?」 「心乃原が、少し怒ってる」 「え?」 「彼女は、」 氷月さんが言って暫くしてから心乃原さんがさっきまでの余裕な声色ではなく、真剣な声色になった。正直に言うと凄い驚いた。あの心乃原さんが怒っているなんて |