目が見えない人の願い[中] (3/5) 「わぁ……」 本当に近かった。歩いて数分の大きな公園では桜が沢山、それは沢山咲いていた。 「さて、お目当ての桜は…あっちね」 そう言って心乃原さんは桜の木が無い方向に目線を代えた。 「あっちには何も…」 「ある。」 「え?」 氷月さんも真っ直ぐ心乃原さんと同じところを見て呟く。 目をこらして見てみるも咲いている桜は一本も無い。 咲いている桜は一本も無かった。 あるのは何も咲かせても実らせてもいない木が一本。 その時、僕の頭に何かがよぎった。 「もしかして、あの木なんですか?」 「えぇ、でも本物かどうかは既にあそこにいる彼に遇わないとね」 「いるのですか?」 「えぇ。」 僕らは木に近づいて、既に居るだろうと心乃原が言ったお客様が逢いたい人に遇いに行った。 でも、何もない。 でも不思議としぃんと周りの音が聴こえなくなった様な気がする。 「心乃原さん…えとお客様が逢いたいと言われたお方は…」 「いるじゃない。ここに」 心乃原さんが枯れかけた木の幹をそっと撫でる。 『あなた方は誰ですか?』 そして何処からか声が聴こえた。 |