目が見えない人の願い[中] (2/5) 翌日、まだ住んで二日目のあまり慣れていない家なのに何故かぐっすり眠れて寝起きが良かった僕は居間へと向かった。 そこにはもう氷月さんが居て、朝御飯を作っていた。 それを見て寝過ごしたかと思って時計を見たけどまだ朝の六時だった。 「おはようございます、氷月さん」 「お早う」 「あれ?心乃原さんは…」 「寝てる。ったく今日の依頼は朝にやらなければいけないのに…」 あのぐーだら店主め。 と言いながら氷月さんは味噌汁の具材を切る。 そう言えば昨日心乃原さんがお客様に『朝、七時半頃に桜の場所に行ってください。私達のことは気にしないで一人でお願いします』って言ってたなぁと思い出しながら、僕も氷月さんのお手伝いは出来ないかと彼に近づいた。 「何かお手伝いすることはありますでしょうか?」 「……じゃあまず味噌汁の碗を出してくれ。それから心乃原を起こして来てくれないか?」 「はいっ!」 何故か氷月さんはちょっと驚いた様な顔をして、僕はそれに応える。居候させてもらってる身だから、そうじゃなくてもお泊まりさせてもらったとしてもやるけど、お手伝いはしたい。 そしてお碗を氷月さんに渡して、氷月さんに教えてもらった部屋…心乃原さんの部屋へと向かった。 この家は…家って言うより屋敷って言った方が良いかもしれないな。うん、屋敷はとにかく大きい。二階が無い、要するに平屋だけどそれでも大きいと思う。 全体的に江戸時代みたいな雰囲気の妖怪横丁でもこんなに大きな屋敷に住んでいる妖怪はあまり居ないだろうな… そんなことを思っていたら氷月さんに言われた部屋に着いた。 よし……っ 「心乃原さーんっ朝ですよ!!」 ガラッと、氷月さんに言われた通り襖を勢い良くあけて、心乃原さんの部屋に一度に沢山の日光を入れた。 「まーぶーしーぃー…」 布団の中にうずくまる心乃原さん また僕は氷月さんの言う通りに申し訳ないけど布団を掴み、ひっぺ剥がす。むきゃっと心乃原さんは変な奇声を発した。 「心乃原さん!今日お仕事でしょ!遅れたらどうするのですか!?氷月さんが言ってました。俺達は客より早めに行かないとって」 「でーもぉ…」 「でもじゃありませんっ朝御飯出来てるんですから!あ、ちょっと寝ようとしないでください!!心乃原さん!ちょっ、しーのはーらさぁぁん!」 「ご馳走さまでした。」 「ご馳走さまでした!」 「ん。」 数分後、やっと起きた心乃原さんと一緒に御飯を食べた 「氷月さんのお料理美味しかったです」 「そうか。心乃原仕事に行くぞ」 「そうねー行かないとねー…」 よいしょと言って心乃原さんは席を立つ。 そこで僕は昨日からずっと疑問に思っていたことを心乃原さんに質問することにした。 「お客様が言っていた桜の場所は知っているのですか?」 「あぁ、そうだったわね。」 ぽん、と心乃原さんは手を叩き長いゆったりとした自分のワンピースのポケットから小瓶を取り出した。中にあるのは茶髪の髪の毛が一本。 「髪の毛…?」 「そ、お客の」 「え?」 「昨日こっそりとっちゃった♪」 てへっと可愛らしく心乃原さんは小瓶を持ちながら言う。 けど、 ………………………は? 「心乃原さんって髪の毛採取が趣味なんですか?」 「この二日間で一番『あ、やっぱりこの人変だっ!』って言う目ね…違うわよ!これからお客の記憶を視るの」 「記憶?」 「そうよぉーってわけで朝一番で言霊使うわね」 【領域解放】と言って心乃原さんは小瓶を高く上へと上げる。 それと同時にまた陣が床に浮かび上がった。 「【時の歯車逆回し】 【この髪の持ち主の記憶を】 【私に見せなさい】」 小瓶が重力に従い、床に浮かび上がった真下の陣に向かって落ちていく。 割れるっ…と思ったら不思議なことが起きた。 重力に従い落ちていった小瓶がまるで水の中に沈んでいく様に『陣の中に飲み込まれた』 その陣を心乃原さんはじっと見つめる。 僕もちらっ陣の中をと見てみるが何もない 多分、心乃原さんだけにしか見えないんだろうな…言霊で【私に見せなさい】って言ってたから 「………ふぅ、場所解ったわ。」 数分後、心乃原さんがちょっと疲れた様に言った。記憶を見るのって疲れるのかな… 「ここから近いわね。 行きましょう桜の場所へ」 |