目が見えない人の願い[中] (1/5) すっかり夜が更け灰々は既に寝、真夜中の零時を過ぎそうな時間帯心乃原は自室で本を読んでいた。 彼女の自室は和室に近い形で、低い机に座布団、布団、それと小さな本棚がある何処かゆったりとした時間と空気が流れる部屋 「――――――心乃原」 「氷月?」 ゆっくりと部屋の襖を開け氷月が心乃原の部屋へと入る 「相変わらず本を読んでいるんだな」 「知識は溜めといて余計なモノはないからね。」 ペラリッとページを一枚捲る独特の角のある音が、しぃんとした部屋に溶ける様に響く。 「その本見たことがある…わざわざ書斎から持ってきたのか?」 「まぁね。この部屋の本棚に置いてある本は少し分厚いから…寝る前に読むには重いでしょ?だから持ってきた」 「そうか」 そう言いつつ読んでいる本も軽く300ページ近くある本に見えるが…と氷月は言いたくなったが心乃原の本を読む量と速さから見ればまだ軽い読み物なのだろうとすぐに悟り、言い止まった。 ちなみにこの部屋にある本棚には広辞苑とひけをとらない程の厚さの本が隙間なくきっちりと入れられている。 「それより何の用?人肌恋しく… 「なるわけないだろうが。今回の依頼のことについてだ」 「依頼のこと?」 氷月が珍しいわね。と心乃原は言うが氷月はそれに返事をせず話を続けようと口を開く それについて心乃原は自分がスルーされたことについて怒りも、拗ねたりも、悲しみも何も感じない。 言葉を伝えなくても平気な程、長い時間共に居るから 「…今回の依頼、おそらく」 「解っているわ。」 今度は逆に心乃原が氷月の言葉を遮る 「でも私達は依頼を受諾した。だからやるまでよ」 それが私達の仕事なんだから。 そう言って、心乃原は読んでいた本をパタリと閉じた。 |