目が見えない人の願い[前] (2/5) 「お茶お持ちしました!」 数分後、心乃原とお客が雑談をしている最中、和室にお茶を持った灰々と氷月が来た 「二人とも有難う。」 「ふふっまた新しい足音だわ。ここは本当に面白いお店ね」 「初めまして氷月と申します。」 「初めまして。」 お客は氷月を確認するために彼の手をゆっくりと数回触る。 氷月も元から解っていたかの様に抵抗をしない 「貴方、とても綺麗な手をしているのね。大きくてそれでいてしなやか、手先が器用でとても繊細な人なのかしら?」 お客の言葉に氷月は若干驚く 同時に照れている様にも見えた。 「……俺自身の事なのでどうも言えないです。」 「なーに言ってるの氷月!アンタ手先器用でしょうが!」 「僕も見てました!氷月さんのお茶の入れ方とっても優しかったです!」 「…灰々、余計な事を言うな。」 「余計な事を言ってしまったかしら?」 「氷月、お客様を困らせちゃ駄目よ。」 心乃原がにまーっと意地悪そうに笑みを浮かべて言うと、氷月は照れくさそうに小さく 「…じゃあ有難う御座います」 呟く様な声で言った。 「ふふふっ氷月はもうちょっと柔らかくならないとね。さて…」 ピリッ 『…………!?なにこれ…』 何の前触れも無く突然心乃原の声で空気がガラッと変わるのを灰々は肌で感じとった 「貴女の願いは何ですか?」 心乃原がお客に訊く。 するとお客は今まで閉じていた瞳を開けて一瞬切なそうな顔をした 「一回で良いんです。私の目を見える様にしてもらいたいのです」 |