目が見えない人の願い[前] (1/5) カチャッと扉が開かれる 「灰々、耳と尾仕舞え」 「は、はいっ…」 『命を払う事が願いを叶える条件』が中々腑に落ちない灰々だが突然のお客訪問で何も言えず氷月に言われた通り九本の尾と獣耳を急いで見えなくした。 「ごめんください、誰かいらっしゃいますか?」 「はい、今行きます。 氷月お茶ご用意してきて、灰々は私と一緒に」 「解った」 「は、はい!」 お客の暖かくて優しい声に心乃原と灰々は足早に玄関へと向かった。 「今晩は、良い月夜ですねぇ」 心乃原と灰々が玄関に着いたと同時に淡い空色に蝶々の模様が描かれている着物を着て、目を閉じている女の人…今回のお客が言った 「えぇ、ようこそ。段差がありますのでご注意くださいね」 「お気遣い有難うございます。 私、目が見えませんので」 『えっ…』 全て見ただけで解っていた様な心乃原と目が見えないお客に灰々が小さく驚いている中、心乃原はお客に手を差しのべお客もその手をとった。 「あら、足音が一つ多い…貴女以外にもお店の方がいるのですか?」 手を引かれながらお客が言う。 「はい、ここに一人と奥に一人。」 「は、初めまして灰々と申します!」 「少年の声、まだ若いのに偉いわねぇ…」 「灰々、お客様は和室へお通しするから氷月にお茶は和室へ持ってくるように言ってくれない?」 「わかりました!あ、和室って何処ですか…?」 「お茶を運びにくる氷月に着いて行けば良いわよ。ちなみに氷月はその曲がってすぐの台所にいると思うわ」 何て真っ直ぐな子なんだろうと思いながらクスッと心乃原は笑う 「そうですよね…えへへ、すみません。じゃあ行ってきます!」 裸足でパタパタと小走りで氷月の元へ向かった。 「元気な子ですね」 その後ろ姿を音で感じたお客はクスクスと笑う 「まだまだ新人ですので」 心乃原もつられて笑った。 |