頼み事 (7/7) 振り向くと心乃原が漆黒の髪を揺らし、自信満々に言った。 「私はね、元悪魔として神王が決めたルールに乗っ取り何でも屋をしているの。だから獅子河原からの依頼って事で貴方と行動を共にして記憶捜しを手伝ってあげる」 「ちなみに俺も心乃原と何でも屋をやっている」 「ほ、本当に良いんですか?」 「えぇ、但し貴方にも私の仕事を手伝ってもらうわ。それで良いなら」 「あ、有難う御座います!本当に、僕…有難う御座います!」 今まで垂れていた狐耳が立ち、九本の尾が振りほどけるのではないかと思うぐらいぶんぶんふっさふさと動き、それをみた獅子河原が『解りやすっ!』と心のなかで呟いた。 「それに貴方を狙ってやってくる輩もいるかも知れないしね。ソイツ等が言霊を使えるならぜひお相手したいし〜あ、勿論記憶を取り戻した貴方ともお相手をしたいわ!」 「よく解らないですけど有難う御座います!僕頑張って心乃原さん達のお仕事手伝いますっ!」 「……テンション高い…用が済んだのなら帰りたいんだが…」 「あ、そうね。帰らないと今晩早速仕事よ」 「はいっ。あ、」 くるり、と灰々は獅子河原の方に振り向く 「色々お世話になりました!その…記憶無くしたり読んじゃいけない本読んだり改めて申し訳ありませんでした。神王に宜しく言っといてください。」 「お、おぅお前さんも気をつけろよ?心乃原の仕事は意外とハードだからな」 「はい!」 「話しはすんだ?じゃあまた言霊で帰るわよ。 【領域展開】 【詠唱破棄】 【三人を私の家へ】!」 再び心乃原、氷月、灰々の足元に魔方陣が浮かび今度は風が吹き荒れる事無く三人は心乃原の家へと移動した。 「相変わらず見事な言霊だな。 さて、これからが大変だ…あの三人に神王の加護があります様に」 「はい着いた。」 それから数秒も掛からず心乃原の家に着いた三人 「ここが心乃原さんの家ですか?」 「そうよー高校まで徒歩20分、自宅兼何でも屋の店」 「にしても広いですね…」 「高校では名家の跡取り娘って設定なの。部屋が無駄にあるからここで氷月も暮らしてるし貴方もここで暮らすのよ」 「解りました。あ、何でも屋って何を報酬として貰ってるんですか?やっぱりお金とか…?」 「いいえ、命よ」 え…? 「し、心乃原さん!?いったい、え、そんな…」 命なんて… そんな事しちゃ… 「落ち着きなさい。 私は神王が決めたルールに乗っ取り何でも屋をしてるって言ったでしょう? そのルールが色々複雑なのよ」 「ルールですか?」 「その話は元番人の氷月にっ!」 「何故そうなる…」 「別に良いでしょー?あんまり話してないし」 「…解った。 神王が定めた世界法律第1147条 『天使抜け、または悪魔抜けした者であっても世界の歪みを正さなくてはいけない。故に人間の命を頂かなくてはならない』」 「そんな理不尽な法律を神王が定めたのですか!?」 「まだ続きがある 『しかしそれは余りに理不尽。 ただ命を狩るのでは無く、人間の手では到底叶わぬ相手の願いを叶えその願いの分だけの命を頂け』 と言う内容だ。」 「要するに対価よ。私達以外にも抜けた者は少なからずいるわ。だから何でも屋は私達以外にも居るの」 「でも…」 「仕方ないでしょ?命を貰う事と願いを叶えに関しては相手に説明して同意して初めて成立するのきちんとした契約をしてからやるって事よ」 「………………」 「逆に言えば、命を掛けたい程叶えたい願いがこの世には存在するって事。……さて、そんな事を言ってる間に時間だわ」 「客だ」 心乃原と氷月が同時に玄関の方へと顔を向ける。 それと同時にゆっくりと玄関の扉が開いた。 了。 |