03

「貴女はスタンド使いですか?」
「NO!」
「DIO様を知っていますか?」
「YES!」
「どうやってこの屋敷に入ったか説明できますか?」
「NO!」
「貴女は私どもの敵ですか?」
「NO!」
「ふむ…」

テレンスが行った質疑応答に対するなぎさの答えはなんとも奇妙なものだった。彼女自身の出世等々に関する質問には全てNOが、そのためなぎさが認識している自分の情報は名前だけだと推測できる。因みに名字に対する質問に返ってきた返事もNOだ。彼女がYESと答えたのは自分がなぎさという名だという事と、DIOを知っているかという質問のみだ。
ベッドの端に腰掛けて、足をぶらつかせるなぎさは、少し離れた所に位置するソファーに腰掛けるDIOと目が合うとふにゃりと、至極嬉しそうに微笑む。そうしてまた、視線を前に戻し暫くぼーっとした後DIOを見つめ、こう、尋ねる。

「おにーさん、だぁれ?」

そうしてまたDIOは自分の名を教え込む。そんなやりとりを何度も何度も繰り返しているうちになぎさに変化が現れた。
宙を彷徨っていた視線がDIOに戻り、暫く見詰めた後なぎさは微笑み、「DIO」とその名を口にした。DIOをDIOだと認識した。彼を覚えていた。そんな当たり前のことをなぎさは何時間も掛けて漸く行ったのだ。その後なぎさのためにとテレンスが洋服を持って来た時には「だぁれ?」と尋ねたが、DIOが暫く席を外し、戻って来た時には「おかえり、DIO」と彼を出迎えた。テレンスの事は忘れていたが、DIOの事はしっかりと覚えていたのだ。
これは健忘症とも、認知症とも、アルツハイマー病とも違った症状だ。読んでいた本を閉じたDIOはゆっくりとなぎさに歩み寄った。先程まで読んでいた医学関係の本にはなにも手掛かりになりそうなモノはなかった。何故、どうやってなぎさが此処に来たのか。その答えも分からないままだ。だが、逆に興味が湧いた。なぎさという一人の少女に。

「テレンス」

だから、貴様を迎え入れよう。私の客人として。観察対象として。この出逢いが、天国への道しるべになるだろう事を祈りながら。

「ようこそ我が館へ。歓迎しよう、なぎさ」



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -