にゃんことハロウィン  


朝からうちの年中発情期な馬鹿猫は落ち着きがない。
理由は簡単、今日がハロウィンだからだ。


ぱたぱたと、尻尾を左右に振りながら猫型の政宗が近付いて来る。
そっと抱き上げ膝の上に下してやった。

見上げてくるキラキラと輝いた眼が、正直鬱陶しい。

自分から動くのではなく、私が折れるのを待っているな、コイツ。


朝起きてからずっとこの調子だ。いい加減この状況に嫌気がさしてきた。

政宗に気付かれないように溜息を吐く。
よしよしと頭を撫でてやると嬉しそうに目を細めた。

「何だ、政宗?」

そう言うと、政宗は待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべて人型になり、私の座っている椅子の背もたれに手を掛けた。
あぁ、完璧に追い込まれたな。

ゆっくりと近付いてくる顔

浮かべるのは、妖しい笑み


「Honey…Trick or Treat」

私の耳元で低く、掠れた声で囁く。
ぶるりと身が震えたのが分かった。

ゆっくりと顔を離した政宗は眼を細め、口元にうっすらと笑みを浮かべ、再び顔を近づけてきた。

いつの間にか腕は私の頭と腰に回され、身動きが取れない。

少し動けば止まる政宗。
その隙にテーブルに用意しておいたお菓子を政宗の唇に押しつける。

それを食べながら私を睨み付ける欲に溺れた瞳
それから逃れるように私はゆっくりと口を開いた。

「はい。お菓子」

にこりと微笑むと政宗は悔しそうに眉間に皺を寄せた。

「たんねぇ…」

ぼそりと呟かれた言葉に気付かないフリをして政宗を視界の端に追いやり、テーブルの上に広げてある雑誌に視線を落とした。

が、顎を掴まれたかと思うと、逃げる隙を与えず強引に重なる唇。
抵抗空しく貪り続けられる。

苦しい、と胸板を叩くとそれは意外とあっさり離れた。


欲に溺れた瞳はそのままで、政宗はさっきよりも掠れた声で囁く


「俺は…Honey、アンタが欲しい」

なぁ…くれよ

その悪魔のような囁きを無視する術を私は知らない。


一度視線を落とし溜息を吐いた。諦めの溜息。

そして今度は私から唇を合わせた。





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Trick yet Treat:お菓子いいから悪戯させろ



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