雨音を聞きながら某は主様の布団の中に潜り込んだ。
普段は主様の手伝いが出来ぬから人型で居るが今日は違う。
小さな子犬の姿で丸くなる。
主様が居ない。
雨のせいで主様の匂いが掻き消される。
主様の居ない雨の日は嫌いだ
主様が居ない。主様の匂いがしない。
独り…
布団からする主様の匂いに安心してゆっくりと瞼を閉じる。
…主様に抱きしめられて寝ているようだ…
主様の匂いに包まれながら某の思考は闇へと落ちて行った…
ガチャリと玄関の扉が開く音で目が覚めた
主様だ!主様が帰って来た!!
ガバリと飛び起きて人型になると大急ぎで寝室から出る。
早く、早く主様に…
「主様!!」
「わわっ…幸村?!」
勢いよく主様に抱き付けばふら付くその小さな体
後ろに倒れないように支えながら首筋に顔緒を埋め主様の匂いを肺いっぱいに吸い込む
「お帰りでござる!!主様!!」
「うん。ただいま幸村」
雨の日は嫌いだ
独り…独りになってしまうから
でも、主様のこの笑顔を見るだけでそんな事は気にならなくなる…
さっきまでしていた雨音も全て主様の声に変わる…
今は…独りじゃないと
そう、思える
「幸村、今日の晩御飯はカレーだよー」
「楽しみで御座る!!」
貴女と、二人
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The sound of rain.:雨音
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