体育の時間
「で、二時間目はずっとお説教。分かった?」

湯木が花鈴にこれまでの出来事を説明しているのを千歳と二人で後ろから見ながら体育館に向かう。

あー腹減った。
あんだけ走った後にパン一個はキツい。
駄目だもたない次体育とか殺す気かってんだ…

「ふーん…そんな事が…へー」

と、適当に相槌を打つ花鈴
…っておい、超他人事だなぁお前
こっちは生死の狭間を彷徨ったっていうのに…

「にっしてもお前、よくあんな五月蠅い教室で爆睡してたなぁ尊敬するわ」
「ふっふっふ、もっと尊敬してもイイよ千歳!」
「誰がするか馬鹿」
「あれ?!桐樺ちゃん?!話が違う!!」

まぁ、そんな感じでやっと覚醒した花鈴と話しているうちに体育館に着いた。

うん。着いた。
着いたよ…

…着いたのは良いんだけどさ
毎回するの止めてくれないかな…


「うぅおやかたさばぁぁぁぁぁあああああああ!!」
「ゆきむるわぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」



殴り愛


「まーたやってるよ殴り合い…なぁ、千歳」
「湯木ちがうぞ。殴り合いじゃなくて殴り愛。はい、ここテストに出るからねー」
「はーい」
「何のテストだ」
「「桐樺ちゃん怖い」」
「……」


気持ち悪いから止めて

「うぅおやかた<バキッ>ぐほぅぁぁぁああ?!!!」
「ふははは!!精進が足らぬわぁ!!!幸村ぁ!!」
「くっ!お館様ぁ!!この幸村慢心しておりましたぁあ!!」


いつの時代だよ…まったく
現実逃避紛いの事をしてみても嫌って言うほど耳に入る…
あーもう!煩い!!
にっしても幸村、あれだけ走ったのに元気だねぇ…
さっき物凄い量のパン食べてたからな…

「ねぇ…誰か止めようよ。授業…」

ポツリと花鈴が呟いた。
まったくもってその通りだけど、絶対嫌だ。
高確率で巻き込まれる

「止めれるとしたら…アイツぐらいでしょ。なぁ千歳」
「あぁ、そういえば。ナイス湯木!」
「ヤッホー佐助―!!」

湯木が苦笑しながら殴り愛を見てる佐助に向かって叫ぶ
そして俊足でこっちまで来た
見てるんだったらあの殴り愛止めろよ…

「花鈴ちゃんおそよー」
「おそよー」

とりあえず体育館シューズを履いて入口に立ってる佐助の所まで行く。
佐助の両サイドに湯木と花鈴で、私と千歳は佐助の真後ろで待機っ!

「これ、いつからやってんの?」
「んー…5分くらい前かなー?」

千歳と二人、佐助に気付かれないように準備体操なう(笑)

「クラスのヤツ、ほとんど来てるのに何で誰も止めないの?」
「それは湯木ちゃん、日常茶飯事だからねー」
「ふーん…」
「ま、そういう事で」

ポンっと花鈴が佐助の肩に手を置いたのを合図に私と千歳は脚を上げる
そして――

「「行ってらっしゃーい」」

――ゲシッ

「えぇぇぇえええ?!!!」

佐助の背中を思いっ切り蹴る!!

「行っけぇぇええ!!佐助ぇええ!!」
「千歳ちゃん何言ってんのぉぉぉおおおお?!」



千歳がエールを送るなか、佐助が飛んで行った先には…信玄さんを殴ろうと振りかぶった幸村が!
よし!このままいけばいい感じになるんじゃね?

「うぅおや…って佐助ぇぇえええ?!」
「嘘だろぉぉぉおおう?!<バキッ>ぐおぅ!!?」
「あ、良い音なった…痛そ」

千歳、表情と台詞が一致してないから
嬉しそうに笑うな

そして、幸村に殴られた佐助は方向転換して信玄さんの方に…

――スッ

ってえぇぇぇぇえええ?!信玄さん避けたぁあああ?!

「そりゃないぜ大将ぉぉぉおおう!!…ぐへ…」

ドンッとこれまた良い音を立てて佐助は壁に激突!!

『どんまい!!』
「うるさいよ!!」
「ふははは!佐助ぇ!お主も精進が足らんのぉ!!ぬ?チャイムが鳴ったのぉ…よし!授業を始めるぞ!!」
『この流れのまま始めるのかよ!!』



と、まぁ無事に体育開始…?








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