地獄のドッジボール3
「花鈴殿はいつ当たったのだ?」
「あぁ、湯木の顔面に当たったのが跳ね返って背中にクリーンヒットしたからダブルアウト」
「なるほど」

ふむふむと頷く幸村
何センターライン付近で敵と和やかに会話してんの

「とりあえず政宗、さっきの怒りを誰かにぶつけるんだ!」
「この至近距離でアンタの顔面に叩き込んでも良いんだがな」
「いやだなー政宗、味方なんだから私当てても意味ないよ!!」
「あれ俺様は?!」

外野でショックを受けてらっしゃる佐助は放っておいて
はいと政宗にボールを渡せば肩を回して準備運動をしだした

こりゃまーくん本気だな

「いくぜ西海の鬼ぃぃぃぃいい!!」
「来い!独眼竜ぅぅぅぅううう!!」


普段お互いの事は名前で呼び合ってるくせにこういう時だけ二つ名で呼び合う
小学生か

最初とは明らかに違う政宗が本気で投げたボールはバシィン!と物凄い音を立てて元親の腕の中におさまった

が、しかし

「あ、」
『あーあ』

政宗の投げたボールの威力を殺しきれなかったからか、はたまた単に元親の頭が弱いからか(失礼極まりない)ぽんぽんと空しく床で跳ねるボール
こじゅと壮絶なリアル鬼ごっこを繰り広げた時は格好よかったのにな…
みんな、敢えて無言
すごすごと退場する元親

「ま、まあ元親、そんな時もあるって!!」

な?と元親を励ますKG
そんな二人は放っておいて敵陣確認
んー…人数的にはどっこいどっこいで戦力はこっちの方が有利かなー
なんて、いつの間にか全力でドッジをするB組メンバー
とりあえずボール回収しないとな、なんて思いながらもう一度敵陣に目をやれば視界の端に映る何やら黒くて禍々しい物
…これは

「…みんな…みんな…死んで逝く…これも市の所為」

それはまるで阿鼻叫喚の地獄絵図
幻妖言惑第五天魔王な織田お市その人

みんな生きてるよ!死んでないよ!
大魔の手をゆらゆらさせながらコートの端から真ん中へと歩いてくる市
大魔の手にはボールが
…これは、やばい
いらん人に火つけてしまった感ハンパない

「ごめんなさい…ごめんなさい…」

ひゅっと頬を風邪が掠めていき

「くっ」

かすがの呻き声が聞こえた
一体何が起こった
みんなが呆然とする中ころころと転がるボールを拾い上げる大魔の手

「不覚…っ!全く見えなかった…!」

ちょ、かすがに見えないんだったら一般ピープルな私に見えるはずないって!
ヤバい、これはマジでヤバい

――バシィィイイン!

「くぁ…!」

いつきちゃんの呻き声が更に私を焦らせる
次は私か!次は私か!
なんて心の中で叫び名がら防御態勢に入る
こっちの残りは私、千歳、政宗
それに対してあっちは市、幸村、オクラ、蘭丸くん、刑部
外野にボールが回らない以上復活はないから…ピンチ

「このやろぉぉう!!」

転がっていたボールをスライディングで取りそのまま市に向かって投げるという無駄に格好良い事をやってのけた千歳
なにその珍しいアグレッシブ感
とにかく、千歳がなげたボールは大魔の手まで真っ直ぐ飛んで行き

――ぱしっ

は じ か れ た
…これは

「「…お市、アウト―」」
「…へ?」

大魔の手は体の一部じゃないとかそんな事はこの際どうでもいい
とりあえずこの危険分子を一刻でも早く退場させる事の方が重要だ…!
それにまぁ、大魔の手でボール投げてたしな

「やれ第五天、ボールを弾くは反則よ。」
「…そうなの?」

ふらふらと退場する市
いつの間にか根の国は閉じていた
…よかったよかった

「…長政様…市、頑張ったのに…」
「いや!お市ちゃんは頑張ってたって!」

次から次へと慰めるのも大変よな、慶次
とりあえずこの流れに乗って政宗がオクラを当てて3対3

「お前!何当たってるんだよ!」
「我に口出しするでない!!(半泣き)」

そのまま口論を始める湯木と元就
いや、半泣きて

「まぁそんなに落ち込むなよ」
「ボールを取りこぼした奴に言われたくないわ」
「…」

あれ?
半泣き…?
元親の方が泣いているように見えるけど…?
でもまあ、B組の心は慰める訳ではなく元就を弄る方向で団結しているわけで

『やーいやーい!日輪の馬鹿野郎ぅぅぅぅううう!!』
「日輪を馬鹿にするでないわ!我は日輪の申し子毛利元就!にーちりーんよー!!」


逆 効 果
弄って落ち込ませるつもりが逆に元気にしてしまった…
もう無視だ無視




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