地獄のドッジボール2
「ちょ、誰か助けて!!」

体育館に突然響き渡った湯木の声
何事かと思って声のした方を見れば

立ったまま寝てる花鈴とそれを支えてる湯木の姿が

『…』

2人の身長差は10cmもないけど、それでも自分より高い花鈴を支えるのは相当キツイらしく湯木の手足がぶるぶると震えていた

『ま、取り敢えず頑張れ―』
「へっ?!ちょ、誰かぁぁぁぁああああ!!」
『さて、ドッヂ続けるか』
「何このクラスぅぅぅぅぅうううう!!」

諦めろ、これが人を弄るのが最高の遊びだと考えてるクラスだ
湯木の悲痛な叫びを無視してボールを投げる為に振りかぶる

「ちょ、マジ無理無理無理。誰か助けて下さい」
『えぇー』
「マジたのんます」
『しょうがないな―』
「………」


という事で、私達はしょうがなく、しょうがなく(大事な事なので二回言いました)湯木を助ける事に

「とりあえず桐樺、顔面当てとけ」
「りょーかい」

千歳の提案を受けて、ボールを思いっ切り花鈴に向かって、投げる!!!

「死ねや佐助ぇぇぇぇえええええ!!」
「なんで俺様ぁぁぁああああ??!!!」


…直前でぐるりと方向転換をして佐助に向かって全力投球
バシィイン!!といい音が鳴って佐助に当たったボールはころころと転がって私の足元に戻って来た

「「佐助、アウトー」」
「いやいやいや!俺様と桐樺ちゃんチーム一緒だから!!」
「「私達にルールなんて関係ねぇんだよ!!」」
「そのようですねぇ!!とりあえず俺様、外野にはいかないから」
「「えぇー」」
「えぇーじゃない!!みんなも黙ってないで何とか言ってよ!!」

『…』

いきなり佐助に振られたB組一同、皆顔をあわし、頷くと

『外野!外野!外野!』
「うぇぇぇええ?!」

「「どうやらここにキミの仲間はいないようだね」」
「…佐助」

俯きつつ佐助に近付いててきた幸村はガシリと佐助の両肩を掴み、思いっ切り、叫ぶ!!

「往生際が悪いぞ佐助ぇぇぇぇぇええええ!!!!」
「ええぇぇぇぇぇええ?!」


幸村、まさかの裏切り!!
クラス全員から外野コールを受けた佐助はとぼとぼと外野の方に歩いて行った
あ、小太郎が背中撫でて慰めてる

「どうでもいいから早く助けてぇぇぇええ!!」
『あ、』


佐助の所為ですっかり忘れてた



転がってるボールを拾い、今度はちゃんと花鈴の顔面めがけてなげる

が、

――ヒョイ

『は?』

顔面めがけて真っ直ぐ飛んで行ったはずのボールは何故か当たらず
その後、千歳政宗元親幸村いつきちゃん蘭丸かすがが投げても結果は一緒で

「アイツ、何かの能力持ちか?」

元親がそう言うのも当然だ

「HA!寝ぼけて左右に揺れてるだけじゃねぇの?」
「だとしたらなんつー危機回避力」
「That's right!」
「「あははははー」」
「笑ってねぇでどうすれば当たるか考えろよ!」
「「サーセン」」
「…」

花鈴のうしろで湯木がキレた…
とりあえずボールを千歳にパスすると、笑いを堪えながら投げる

それはふらふら揺れる花鈴めがけて飛んで行き、そして

――ガク

『あ、』

――パコォォン!!

「いったぁぁぁああい!!」

突然花鈴が前のめりに倒れ、ボールは壁の無くなった湯木の顔面にクリーンヒット

「わお…」

千歳、顔面に当てといてわおって
ま、とりあえずルールだし…

「「湯木、アウト―」」
「…それはいいんだけど、さ、…ボール投げたの誰?」

「政宗」
「What?!桐樺?!」

「へーふーん…」

恐ろしく冷たい笑みを浮かべて湯木は花鈴を引きずって外野に消えて行った
一件落着!!

「よくやったぞ桐樺!」
「いやいや」
「なんの共同作業だコラ」




back