別れと出会いと愛と


昔から女の涙は嫌いだ。

お袋がいつも俺を見て泣いていた。
あの人はprideが高ぇから人前では絶対泣かねぇ…でも、確かに泣いていた。

だが、小次郎が産まれてからはお袋が泣く事は少なくなった。
俺を見なくなったから。
それでも、お袋に笑顔が戻ったから…別に良かった。

良かった…のに、小次郎が俺になつきだすとやっぱりお袋は…泣いた。
もう、お袋の笑顔が俺に向けられる事は…ない。

俺が見る事が出来るのは、お袋の涙だけ…



…女の涙は嫌いだ。



女がまた、俺の前で泣いた。
別れたくないと俺が好きだと…傍に居たいと。

泣きじゃくる女の後ろで友人だろうか?また別の女がこちらの様子を伺っている。
…どうせアンタもこの女の事が一段落したら俺のとこに来るんだろ?
…いつもそうだ

「何で…私と付き合ったの?いつも他の女の人と歩いてるし、デートに誘っても来てくれたことなんて一度もないじゃない…!」

…付き合った?俺とアンタが?
確か…そんな覚えはない。

告白は毎日のようにされる。
それにいちいち答えるのも面倒で…。
適当に答えた時の女だったか?
どちらにしろ、面倒臭ぇ。

「ねぇ!何か言ってよ!」
「…俺はアンタに好きだと言ったか?付き合ってもいいと言ったか?」
「そ、それは…言ってない…けど、あぁって政宗君言ったから…」
「あぁ、なら悪ぃ、アンタの事覚えてねぇわ」
「え?」

ぴたりと、女の涙が止まった。

「…じゃあな」
「へ、ちょっと政宗君!!」

女の涙も叫び声もただ、鬱陶しいだけだ。


未だに俺を呼び続ける女を無視して校舎裏から中庭に出る。
…ったく、校舎裏に呼び出しとかベタすぎるんだよ。
このまま教室に帰れば元親と佐助に絡まれるのは確定だし…帰るか。

授業開始のチャイムが鳴り響く。
それを背に校門へ足を進める。家に帰るのも面倒だしな…街でもブラブラするか。

その時だたった。アイツを見つけたのは。
木の陰に隠れて蹲る女。時折風に乗って嗚咽が聞こえてくる。

別に知り合いという訳ではない
ただ、気になった…それだけだ。
それだけの理由で俺は女に近づいて行く。

「ぅっ…ひく…っ」

女の長い黒髪が風になびく。
それに思わず見惚れる…
初めてだ、女が泣いているのを鬱陶しく思はないのは

それに

「…どうした?」
「っ?!だ…伊達政宗?」
「フルネームかよ」
「ご、ごめんなさい」

涙を拭ってやるのも初めて…だ

「で、…どうした?」
「えっと…」
「フラれた…か?」
「っ!」

女の体が大きく跳ねた。
勘で言ったんだが…当たっちまったか

「二股かけられてたんです…それで」
「Hum…アンタみてぇな良い女をフるとはな…馬鹿な男だ」
「お世辞でも…嬉しいです」

世辞じゃねぇ
そう言ってやりたがったが、また女の目から涙が溢れて来やがった。
それをゆっくりと拭ってやる。

ったく、俺はさっきから一体何をやってるんだよ…
泣いてる女面倒臭いだけだ。
ほっておけばいい…なのに何故かここから動けねぇ。

この女の事が気になってしょうがねぇ

「伊達さんは…優しいんですね」
「優しい?俺が?HA!ついさっきまで女を泣かしてた俺がか?」
「…え?」
「んなことはどうでもいい…ほら早く泣き止め。アンタに涙は似合わねぇよ」

頭を軽く撫でてやれば、女は微笑んだ。
…やっぱ、涙より笑顔の方が似合うな

「いつも、こうして女の子を口説いてるんですか?」
「Uh…?アンタが初めてだよ…こんな事するの」
「そうなんですか…」
「何故だ?」


「…伊達さんになら…口説かれてもいいかなって…思ったんです」


「っ?!」


不意打ち…だ。
まさかそう来るとは思わなかった。
髪の隙間から見える耳まで赤い彼女の顔を見て…可愛いと思った。

今までの女のように狙ってる…媚を売ってる感じもない
今までに関わった事のないタイプの女…

ただ、純粋に可愛いと思った。


「っ!ご、ごめんなさい!こんな事言うつもりはなかったんですけど…」
「…なぁ、アンタ名前は?」
「へ?…莉兎です。咲野莉兎」

咲野莉兎どっかで聞いた事のある名前だ…
あぁ、確かこの前慶次が自分のクラスに三年に二股かけられて困ってる女子がいるとか言ってたが…

「なぁ莉兎、元彼の事…好きだったのか?」
「いいえ…無理矢理彼女にさせられた感じなので…」
「なら、遠慮なくアンタを口説けるな」
「へ?!ちょ…伊達さん?!」

あぁ、慌てた莉兎の顔も中々いいな。
こんなにcuteなヤツを捨てるとは…馬鹿な三年だぜ

「その伊達さんっての止めろ。政宗だ。you see?」
「ま、政宗?」
「Good Kitty.ほれ、行くぞ」
「行くって…何処に?」
「街」
「学校は?!」
「Ya-ha!!」

莉兎の手を引いて校門をでる。
まだぎゃあぎゃあ言ってやがるくせにちゃんと俺の手を握っているのがまたcuteだ。

「お望み通り口説いてやるよ…俺に溺れるくれぇな…」
「っ?!」

莉兎の涙は綺麗だと思った笑顔をもっと見たいと思った。

「…遊びじゃ…ないよね?」
「あぁ、本気だ」


アンタに一目惚れした…この台詞を言うのは、好きだと囁くのはきっと遠くない未来。


女の涙も意外と捨てたもんじゃねぇな莉兎の涙をみたらそう思った。





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