手を繋いで、微笑んだら


「Hey莉兎!出掛けるぜ!」
「…はい?」

時は戦国
私の旦那様は群雄割拠のこの時代に奥州を統べる若き主君、奥州筆頭伊達政宗様

二十歳を過ぎて嫁ぎ遅れた私を娶った物好きなお方

数年前に縁談のお話がきてからずっと私の中では政宗様は物好きなお方

私の家は大して大きくもなく、これから天下を統べようかとしている人には決して釣り合わない
なのにこのお話は政宗様ご自身が持ち掛けたという

なのに、いくら私を娶った理由を聞いても決して答えて下さらない
側近の小十郎殿や成実殿、綱元殿に聞いても政宗様と同じ教えて下さらない

ただ、優しく微笑んでいらっしゃるだけ

あぁ、この方達もきっと物好きなのね




「今日は何処へ?」
「Ahー…とりあえず城下行くか」
「はい」

伊達に嫁いで来てから政宗様は政務の間によく私を連れ出してくれる

それもほぼ毎日

そしていつも何かしらのこっちが申し訳なくなるぐらいたくさんの物をを買って下さる

反物、帯、簪、団子…他にも色々

今日は政宗様お気に入りの甘味処に連れて来て下さった

「真田幸村もよく来るらしいぜ?」

ずんだもちを食べながら政宗様がおっしゃった
んー…やっぱり、ずんだもちは政宗がお作りになったものが一番美味しい

武田と同盟を結んでからあの人はよく奥州に来るようになったと思う

「幸村様が?」
「あぁ、猿飛も買いに走らされるらしいぜ?」
「どうりで…お団子、一番美味しいですものね」
「この前、八ツ時に出したやつもこの店のやつだぜ?ほら、あんたがえらく気に入ってた」

「え?!そうなんですか?!」

「HA!あんたが声をあらげるとは、珍しいな」
「も、申し訳ありません。お見苦しいところを…」
「いや、気にしてねぇよ。あんたはその方がいい」

にこりと、政宗様は優しく微笑んだ
いつもの好戦的なそれとは違って…凄く優しい微笑み
思わず魅入ってしまう

「あんたは素の方が…今のより断然いい」

そう言って、政宗様はまた、微笑んだ
今度は悲しく、影を落として


暫くして、次は城下が見下ろせる丘に来た
ここは政宗様のお気に入り
民の様子が見れるしそれに、ここはまだ小十郎殿に見付かってない秘密の場所
私と政宗だけの…場所

「…そういえば」
「Ah?」
「政宗様は、他に側室を娶らないのですか?」
「…あぁ?」

ずっと、疑問だった
なんで私なんかを選んだのか
政宗様より年上で家柄もよくない

「何故です?」

兄上たちよりも活発で「莉兎が男だったら…」と何度も頭を抱えさせたこの私を

「…素のアンタに惚れたからだ」
「…え、」

私と政宗様以外の時が止まったように感じた

政宗様からお話を頂いたその時、その瞬間から自分を偽り、大人しいお姫様の猫を被っていたというのに
何故、この方は素の私を知っているのか

「同盟の話をしに行った時に、アンタが兄弟と道場に居るのを見てな」

あぁ、道場だなんて…私が一番女を捨てている場所なのに…
くすりと政宗様が苦笑をこぼす

「正直、驚いた自分よりガタイの良い男を投げ捨てる女を始めてみたからな」

穴があったら入りたい…
あまりに恥ずかし過ぎて顔を両手で覆い俯く

「ただ、それと同時にもっと見たいと思った。アンタの男勝りしたその性格を、飾らないあの道場で見た笑顔を」

なのに、

そう言って政宗様は私の両手首を掴み強制的に顔を見ようとする

「親父さんに何を言われたのか知らねぇが俺のとこに来た女は別人のようにしおらしくなってやがるし」
「ひゃっ」

ぐいっと引っ張られ、飛び込んだのは政宗様の厚い胸元
顎を掬われ真っ赤な見上げれば妖しく微笑む政宗様がいて

唇にいは政宗様のそれが落ちてきた

あぁ、混乱

するりと、私の指に政宗様の指が絡んでくる

「ま、女の顔したアンタも悪くないがな」
「ま、政宗様…」
「莉兎」

耳元で名を囁かれ思わず体が震える

「俺の前では偽るな、素のままでいろ」

俺は素の莉兎に惚れたんだからよ

そう言って優しく微笑んだ後もう一度降ってきた政宗様の唇

はい、と弱々しく呟いた返事ごと貪られる



…こんな私の素に惚れるなんて本当に物好きな人

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