期間限定の、恋人


竜の旦那に彼女が出来た。

これだけ聞けばいつもとなんら変わりはない
社会人から高校生、たまに中学生という、女の人ならどの世代でもオッケー(流石に熟女や人妻には興味ないらしいけど、でもそんな人達にもモテる)なのが竜の旦那だ

だから彼女が出来たと言われても「またか」の一言で片付く


でも、今回は違った

その日、竜の旦那は恥ずかしそうに俯いた彼女の手を引き、校内を歩いていた
まるで他の奴に見せつけるように、自分のモノだと主張するかのように…

竜の旦那との付き合いは長いけど、こんな事は初めてだ

それに俺様に全然情報が入って来ないっていうのも怪しい

少しだけ、竜の旦那の彼女に興味を持った
勿論、奪おうなんてそんな事は考えない。
長生きしたいしね



適当に校内をふらついていると講義室に一人でいる竜の旦那の彼女…莉兎ちゃんがいた。

ちょっとした好奇心で話しかけてみるとその小さな肩が大きく跳ねた
敵意剥き出しでキッと睨みつけてくるその目は意外にも鋭い

莉兎ちゃんの隣の席に座れば分かりやすく俺様から距離を取る

わー俺様ショック―

なんて少しおどけながら莉兎ちゃんのことを観察してみる
竜の旦那と歩いてる時はいつも下を向いてるからちゃんと顔を見るの初めてだなー

恥ずかしいのか少し赤くなったその顔はとても綺麗な顔をしていて、服装的にも格好良いというのが似合う容姿をしている
今まで俺様や、慶次の所に情報が入って来なかったのが不思議だ

こんな綺麗な子、男なら普通ほっとかないと思うし女の子とも普通に仲良いと思うんだけどなー…

「…私に何か用?」

小さく溜息を吐いて少し呆れた感じで莉兎ちゃんは俺様に問いかけた

あぁ、ずっと見つめてたからか

「竜の旦那が大切にしてる彼女って一体どんな子なのかなーと思ってね」
「貴方政宗の友達?」
「んー…そんな感じかなー?」

どちらかというと腐れ縁かな?

苦笑気味に言うと莉兎ちゃんは少し微笑んだ
あ、笑うと可愛い

「私は…期間限定で、政宗の恋人」

いきなりの爆弾発言

しかも嬉しそうに微笑むから更に分からない
期間限定ってどういう事?


詳しく聞こうと莉兎ちゃんの方に手を伸ばしたところで現れたのは

「Hey猿、人の女に何してんだ?」

どす黒い殺気を纏った伊達 政宗その人

「あ、政宗」

ぱたぱたと莉兎ちゃんは政宗に走り寄り、その腕の中に閉じ込められた
ぎゅーっと思いっ切り抱き締められ苦しそうにもがくけど、どこか嬉しそうだ

「えーっと竜の旦那?俺様さっき莉兎ちゃんは期間限定の彼女だって聞いたんだけど…」

莉兎ちゃんの荷物を取る為にこっちに来た政宗に問えば

あぁ、それか

と予想してたのとは少し違う反応が返って来た
政宗もどこか嬉しそうに口元を緩めている

「来月、式挙げんだよ」
「へー…ってえぇぇぇえ?!!」

まさかのカミングアウト…
あれか、後ちょっとで夫婦になるから期間限定の彼女ってヤツか…

「えーっと…とりあえずおめでとう?」
「Thank you」
「結婚式には呼んでね」
「Of course」

まさかこんな漫画みたいな台詞を言う日が来るなんて…思ってもみなかったよ

「友人代表のあいさつ俺様がやろうか―?」

自分で言っててなんだけど
この台詞も、予想外

「あー…そうだな。俺等の周りに真面目に出来そうな奴猿ぐれぇだしな…頼むわ」
「任されました―っと」
「おう。詳しくは後で連絡する」
「はいよー」

じゃあな
と言うと莉兎ちゃんの手を引いて講義室から出て行った
あぁ、莉兎ちゃんは政宗の事を待ってたんだなーなんて思ったのと同時にさっきの会話を思い出す…

友人代表挨拶なんて面倒な事引き受けたなーなんて思ってみるけど実際はそうじゃない

あんな優しい顔をした政宗は初めて見た
一人の女の子にあそこまで夢中になるなんて…昔の政宗からは想像できない

莉兎ちゃんの影響だろうか
いや、きっとそうだ断言するよ、俺様

窓の外を見れば手を繋いで帰る二人の姿が見えた
羨ましいなーなんて思いながら俺様も講義室から出る

俺様にも、あんな風に愛せる人が現れるのだろうか…なんて、がらにもない事を考えている自分が可笑しくなって自嘲気味に微笑んでみる

とりあえず、あの二人の幸せでも願ってましょうかね




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