死んではいけない


飛び散る血飛沫、血の匂い、瞳から消えていく光。

殺した人数なんかいちいち覚えていない。
俺様はただ命じられるままに殺すだけ。
淡々と機械のように目の前の敵を武田にとって不利益となる者を、ただ殺す。
そこに感情なんて、情けや躊躇いなんて一切ない。
俺様は感情の無い忍び、ただの道具。


…そのはずだった。彼女に出会うまでは。

「人の命は皆平等よ」

武田領内に住む莉兎はそう言った。
世の中に要らない人間なんて居ない居てはいけないと。
莉兎は泣きそうな顔をして、そう言った。
だから俺様も道具ではないって、今度は泣きながら言うんだ。
莉兎には笑っててほしいのに。

俺様の古傷を見てあの子はいつも泣く。
俺様のために…泣いてくれる。
それがどうしようもなく嬉しいって気付いたのはいつだろ?


血の匂い。
あぁ、コレは俺様の血の匂い。
脇腹から溢れて出てくる血が止まらない。

それでも俺様は殺し続ける。
この任務が終われば莉兎に会える…だから、

音もなく、ある男の首を刎ねる。
やっと終わった。
ふらつく体に鞭を打って城から抜け出す。

あー…血が足りない。
とりあえず止血だけして甲斐に向かって走る。

何故だろ、足が軽い。
甲斐に着いたら薬塗らないとね。
じゃないとまた莉兎に怒られる。

命を粗末にするなって。




死んではいけない


(死ぬわけにはいかないんだ)



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