撫香は、どちらかというと'綺麗'に分類される顔付きをしている。育ってきた環境か親の血か、またはその両方が彼女の顔をそう形成したのだろう。それに彼女が好んで施すメイクからか、初めて出会った時も制服を着ていなければ女子高生だとは思わなかっただろう。それほど彼女は大人びている。
俺に合わせた服やメイク。最近雑誌を読んで研究しているらしく、編み込みだとかヘアアイロンを使ってどうのこうのと髪型までもコロコロと変えている。全て俺のためにしている事だと分かっているからか、悪い気はしない。

「左馬刻さん!見て下さいこのペンギン。壁に寄りかかって寝ていますよ」
日光が降り注ぎ、薄く引かれた水がキラキラと輝く。それに負けじとスマホを構える撫香の顔も輝いていて、自然と口角が釣り上がる。
「可愛いな」
「ほんとに!ガラスで押し潰されたところがきゅっとなっていて、」
「可愛いな」
「……あの?」

撫香は綺麗な顔をしている。大人びた表情をする。事務所でもチームの奴らといても、常に背伸びをして俺の隣に立つ努力を惜しまない。ただ、年の近い奴といる時は年相応の表情をしているのであろう。俺に向けられることはない、無邪気な、子供らしい表情。
それを羨ましいなどと思ったことは1度もない。何故かって?そんなこと、決まっている。この上気した頬も少し潤んだ瞳も、男を誘う花のような表情全てが俺にのみ向けられているから。

「えっと、もしかして私に言いました……?」
「もしかしなくてもてめーに言ったわ。なんだ?俺が可愛いつったらおかしいのかよ」
「だって、左馬刻さん、ヤってる時にしか言わないから……へへっ、照れますね」

この、ひどく女の顔をした撫香を知るのは俺だけ。それだけで満たされるとは、安い男になったものだと呆れた笑いさえ零れる。

「撫香、可愛いよ、お前は」

重ねた唇の甘さも、自分の口から零れたとは思えない甘い言葉も。胸焼けしそうなこの甘さがどうでもよくなるほど、むしろ心地よくなるほど、俺はこの顔の綺麗な女に溺れているのだろう。




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