「……なにしてんだ」
「寝込みを襲ってるんです」
「ンなもん見りゃ分かる」
顔を擽る感覚に目が覚めればパンツだけを履いた状態の撫香の顔がドアップで何事かと一瞬頭を悩ました。俺の体に完全に乗り上げている癖に全く重みを感じないため別の意味でも眉間にシワが寄るがまあ、問題にすべきはそこではない。
じゃれつく撫香をあしらいながら携帯を確認すれば5月24日の0時13分。一昨日から仕事が立て込み、実に1日以上離れていたためつい先程まで文字通り骨の髄までしゃぶりつくしたところだ。新しく出来た噛み跡やキスマークが白い肌に映えて生々しい。ない胸を押しつけて来るように体の上を跳ね回るので、散々鳴かされた癖にまだ足りないのかと真新しい煙を吐き出せば、少しも逃がさないとでもいいたげにぱくりと口に含んだ。そしてそれを何を思ったのか俺に向かって吹きかけてきた。撫香の匂いしかしないそれに困惑が深まる。
一体、俺にどうしろと。
「昨日、」
「あ?」
「昨日、キスの日だったんです」
それがどうしたと、喉まででかかった言葉を飲み込む。そんなことを言われるまでもなく乾燥した互いの唇が切れるまでしたし、もっと言えば一日ぶりに顔を合わせてはじめに交わしたのは言葉ではなく口付けだった。
が、このイベント大好き少女撫香にとって互いがキスの日だと認識した中でするのが重要だったのであろう。
正直面倒臭いと思う。そんなこと俺は知ったこっちゃねぇし、ならもっと早く言えって話だ。だが、募るのは完全にいじけて唇以外に擦り寄ってくる撫香への愛おしさばかりなのだから、もう、どうしようもない。
「撫香」
「……はい」
「来年、ちゃんとしてやるよ」
「……本当ですか?」
「ああ。だから、今日はド変態の撫香チャンがだぁいすきなあっまぁいのくれてやるから、機嫌直せ」



*← →#

TOP - BACK///




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -