「服、全部脱げや」
始まりはほんの些細なことだった気がする。
買い物帰りに左馬刻さんを事務所まで迎えに行って、お仕事が終わるまでのほんの数分車の外で待っていた。話しかけてきたのはもう記憶もおぼろげな、昔の連れのそのまた連れ。セックスしたことがあるようなないような。その程度の相手だった。
掴まれた腕は簡単には解けなくて、舐め回すようなその視線は反吐が出るほど気持ち悪かった。離してと何度言っても力は強くなるばかりで、ホテルがどうとか言っているその口をどうにかして塞いでやろうと買い物袋を強く握りしめたその時。
暖かな温もりと安心できる匂いに包まれて、頬には生暖かなどろりとした液体。下を見ずとも呻き声だけで分かる。
倒れた男を冷ややかに見下ろした赤い瞳が私を射抜く。
ぶるりと、身体が震えた。恐怖で?いやまさか、喜びと快楽でだ。
左馬刻さんが、私なんかに対して独占欲をむき出しにしている。それだけで私の下半身は疼き出す。ああ、なんていやらしい女なのだろう。

話は冒頭に戻る。
買い物袋は廊下に投げ捨てられ、左馬刻さんは私の拙いストリップショーを見ながら苛立たしげに煙草をふかす。肺に辿り着く前に吐き出されたそれは、ほんの数十分で広いリビングを埋めつくしてしまった。
少し前に教えられたように、焦らすようにゆっくりと、男の劣情を煽るように、肌の上を滑らせながらぱさりと衣服を捨て去る。もっと肉付きが良ければ見応えがあったかもしれないけど、私にはこれが限界だ。
「撫香」
オーバーニーソックスに掛けた手を止めてふらふらと近付けば煙を吹きかけられる。この流れでは舐めろ、という合図だ。
ベルトを引き抜いて、ゆっくりと前を寛げる。それだけで私の身体は期待に震える。ああ、いつからこんなにも淫乱な身体になってしまったのだろう。
「ん、ふぅ、じゅぶ、」
竿の部分を手で擦りがらたっぷりと唾液を絡ませて段差の部分と先端を舌で奉仕する。時より頭を撫でられると嬉しくてもっと褒めて欲しくて奥へ奥へと飲み込んでいく。先走りが喉の奥を通って食道を濡らしていく。中から汚されているようで、もっともっと汚して欲しくて、はぐはぐと食べていたら上から気持ちよさそうな吐息が落ちてくきた。左馬刻さんが私の愛撫で気持ちよくなってくれている。その事実だけで下半身が疼く。
「撫香、てめぇは誰のだ?」
「んぁ、さ、まとき、さんのものです」
口から引き抜いてちゅっちゅっとキスをすれば満足そうに頬を撫でられる。先端を口に含みぐりぐりと刺激すれば話を聞けと手首を引っ張られた。すっかり固くなった左馬刻さんのものがうち太ももに触れて早く中に入れろと誘ってくる。ぎゅっと太ももで挟めば盛るなとお尻を叩かれた。ごめんなさぁいと謝ってみても、もう私の頭の中はこれから与えられるであろう快楽でいっぱいであった。
「それが他の男に手形まで付けられちゃいけねぇよなぁ?」
「ふぁい、ごめんなさい」
「首輪でも付けて飼い殺してやろうかぁ?あぁ?」
「左馬刻さんにされることは、全部嬉しいので、いいですよ」
ちゅ、と私の唾液か左馬刻さんの先走りか分からない液体でまみれたモノにキスをしてそのまま頬擦りをする。
拾われたあの日から、私は左馬刻さんのものだ。心も、身体も。だから何をされたって嬉しいし、何でもされたいと思ってしまう。左馬刻さんの所有物である証を与えられるなら、尚更。
「とんだドM女になったもんだよぁ」
「きらい、ですか……?」
「俺がそうなるように躾たんだ。今更嫌うかよ」
ほら、その一言だけで私の淫乱な身体は勝手に感じてしまう。
「ド変態な撫香チャンよぉ、何が欲しいか言ってみろよ」
「んぅ…!んぁ、ぁ、さまときさんが、ほしいです…!やら、だめ、そんなにいじめないでぇ……!あぁ……!」
左馬刻さんと出会う前までは快楽もろくに知らなかった私の身体。今では左馬刻さんが触るだけで頭は真っ白になるし、理性なんて簡単に消し飛ぶ。左馬刻さんがセックスは脳でするものだと以前言っていたが、全くもってその通りだと思う。
「ンなに欲しいなら自分で挿れろや」
「はぁい……」
「弄ってもねぇのに簡単に飲み込みやがって…そんなに好きかよ、俺が」
「あっ、あっ、あっ、んん…!あ、あぁん…!」
「はっ!聞いちゃいねぇ!オラ、勝手に盛ってんなよ!」
「ひゃぁん!」
もう左馬刻さんが何を言っているかなんて私の脳は理解してくれなくて。与えられる快楽だけを処理していく。肌がぶつかり合う音と水音だけが響く部屋の中で、今日も私は左馬刻さんに食べられるの。

世界が私たち二人だけになって、ずっとこうして気持ちいいことだけ出来ればいいのにな、なんて。馬鹿なことを考えながら絶え間なく与えられる快楽の波に身を投げた。



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