一天満谷善慈にとってセックスとは、ただの性欲処理であった。適当な女を抱き、快楽に溺れさせてやりながらその身を貪る。彼のセックスはその細身から連想出来ないほど暴力的であると、善慈の管轄である遊郭街では評判であった。彼女達が培ってきた手練手管などは善慈には全く通用しないほど、安直な表現だが彼は上手いのである。

「んぅ、ふ、はぁ……」

尻に男の逸物を捩じ込まれ、善慈の脚を抱え腰を振る男を眺めながら煙管を吸うぐらいには、余裕であった。
己の胸板に飛び散る汗を感じながら顔面に煙をかけてやる。むせる姿があまりにも滑稽で腹を揺らせば振動で男が呻いた。

「はっ、八弦。君が攻めたいって言ったんだ。ちゃんと俺も気持ち良くしてくれよ」
「あぁっ、っぁ、ぁ、」
「……おい、一人遊びに人のケツ使ってんじゃねぇよ」
「ぁ?!ぁ、善慈ぃ、急に締めな、あ、あ、いっ、あぁぁ……っ!!」

窓から差し込む月光に照らされた男は、元々の色素の薄さも相まってまるで陶器のようなその滑らかな肌を善慈の上に雪崩込ませた。つっと指の腹で撫で上げればびくびくと面白いぐらいにその身体を跳ねさせる。
己の中に注がれる熱を感じながら善慈は深く、深く煙を吐き出した。この男が自分の中で何度果てたかは周りに散らばったゴムの数を数えれば一目瞭然なのだが、遂にゴムをつける余裕もなくなったらしい。いや、快楽に走ったあまりそこまで頭が回らなかったのであろう。

「……おい、八弦いつまで休んでる。俺はまだイってないんだけど?」
「あ、はあ、はぁ……」
「……チッ。なぁ、八弦。そろそろ君のナカでイかせてくれよ」
「なっ?!善慈?!それ、やめっ、あぁぁっ!」

ローションをたっぷりと付けて解してやりながら耳元で囁けば八弦は簡単に果てた。善慈によりあの手この手で開発されたその身体は、善慈の手でのみ簡単に快楽を生み出す。
目を瞑り、口の端からだらしなく涎を垂らし、快楽に肌を赤く染めながらその細い身体を小さく揺らして絶頂を迎える。その様子を眺めているだけで善慈も軽くイきそいになる。どんなAVよりも官能的で、扇情的で、善慈を煽るのには十分であった。未だ快楽に震える頬を労わるように包み込めば愛おしそうに擦り寄ってくる。その表情に、行動に、善慈は熱が下半身に集まってくるのを感じた。絶対にイってやらないと奥歯を強く噛んで耐えた。視覚から犯されているような気分になる。あれか、これが視姦か。

「あぁ、もう。声ガラッガラじやないか。ほらちゃんと水飲んで」
「え、ああ……すまない……」
「それで?俺の穴でオナるの、満足したかい?」
「……は?」

ペットボトルの口から零れる水が次々にシーツを犯していく。白いシーツに横たわる熱の冷めた八弦の裸体は月光を受けなんとも幻想的な雰囲気を生み出していた。桜の花でも散っていればもっといいのだが、善慈の寝室にそのような雅なものが置かれているはずもなく。噛み締めすぎて少し鉄の味がする八弦の唇を堪能しながら今度桜の木の近くの縁側でするのもまた一興だな。などとくだらないことを考えていれば下半身に押し付けられるすっかり固くなった先程まで善慈のナカに入っていたモノ。キスだけで復活するのだから、このキレイな顔をした男はすっかり善慈に塗り替えられてしまったようだ。

「言うこと聞いてヤらせてやったんだ。さっさと挿れさせろ」
「待って、そんな急に……!」
「あ?俺の咥えながらひくつかせてたやつがうるせぇなぁ」

予告もなくぶち込んでやれば弓なりに身体を反らせた。身体が悦びで震えた。浮き出た骨に思わずかぶり付きたくなる。まったく、すっかり善慈好みの身体である。身体にまとわりつくような嬌声も、目を閉じれば女の喉から出ているような錯覚に陥るのだった。

「っは、八弦、俺がお前でオナってやってんのになんでお前がイってんの?ほら、俺をイかせるためにもっとケツ穴締めろよ」
「あっ、あっ、それ、だ、め……っ!やぁぁっ、んっ、んぁぅ」

先走りや精液で滑りのよくなった身体を笑いつつ噛み付き、あの手この手で快楽を与えてやれば、乱暴に揺さぶりながら耳元で甘く低く囁いてやれば、簡単に天国を見る。八弦の快楽は全て善慈が支配していると言っても過言ではなかった。
絡め取られた指に口付けを落としつつ、自分もとんだ腑抜けになったものだと嗤う。セックスとはただの性欲処理にほかならなかった。同じ相手を何度も抱いたり、むしろ自分から股を拡げて相手が挿れやすいようにと穴を解してやるだなんて昔の善慈からは考えられなかった。絆されたのは善慈自身だったのか。意識を飛ばした八弦を再び快楽で叩き起しつつ、善慈自身思考を放棄するかのように快楽の波へと身を投げた。そんなことより今は目の前の男を犯すことで頭をいっぱいにしたかったのである。




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