Night Blindness



漆原が総理大臣になって数ヶ月が過ぎた頃、プトロン対策に、と、男女数人で結成された小隊を戦場に送りだした。

連邦軍と同じように遠距離操作のできるカメラを発明していた連合軍はそれを使い漆原が作った小隊、通称“ジュミニ”を撮影する事に。

“プトロンの頭上あたりでカメラを飛ばしていると、“ジュミニ”がやって来た。
しかし、“ジュミニ”のメンバーの姿を見て連合軍、そして連邦軍の兵も驚いた。
彼等は仮面を付け、リーダーと思われる女は黒いマントを身に着けていた。

さらに、どう見てもその背格好は十代の少年少女だったのだ。

暫くして“プトロン”が現れると“ジュミニ”の内六人が腰の刀を抜き“プトロン”に切りかかった。
リーダーの女が切りかかると“プトロン”は右腕でそれをガードした…が、その右腕は女により切り落とされてしまった。


この光景を見た連合軍と連邦軍の兵士たちは、驚いた。


今まで傷一つ付かなかった“プトロン”の右腕が十代の少女によって切り落とされたのだ。
これに動揺した連邦軍が構えを少し緩めた瞬間、リーダー以外の五人が兵士たちに切りかかったり、銃で撃ち始めた。

それを見た女は、躊躇いも無駄もない動きで“プトロン”の背後に回ると少し飛びあがり、刀を上から下へと振り下ろし真っ二つに切り裂いた。
女が“プトロン”を倒すのと連合軍の兵士全員がやられるのはほぼ同時だった。
全てが終わると六人は刀や銃を納め、他のメンバーは後処理や“プトロン”の死体を持ち帰る為に袋に詰めたりし始め、それが終わると腰を抜かし未だ動けずにいる連合軍の兵を残し日本へと帰って行った。



“ジュミニ”が日本に帰ってくると、かなりの手厚い歓迎を受けた。戦争の影響で滅多にテレビ放送なんてしないのにテレビ局の人間がいたり、中には花束を抱えている人も。
報道陣がリーダーの女に質問すると彼女は一切無視、一つだけ答えた質問がこれだ

「どうして“プトロン”と戦おうと思われたんですか?!」


「別にやれと言われたからやっただけ。」


この一言に皆唖然とするが、彼女達は瞬く間に 素直じゃない私たちのヒーロー となった。


誰も何故彼女が“プトロン”を殺せたのか気にする事も無く―――



その後、漆原は連合軍から高い評価を得たという事で大阪にとある学校を作った。


稲葉学院


“ジュミニ”の様なチームを育成する事を目的とした小中高大一貫学校で、大阪にある学校を本部とし、北海道、東北、関東、中国、四国、九州、沖縄にそれぞれ一校、支部を置いた。
能力のある者、成長するであろう見込みのある者は本部に、そうでない者は支部に。
各学園で一番力…権力のある者を生徒会長とし、漆原に気に入られれば本部の生徒会に一番近いクラス、若しくは生徒会に入るというシステム。
リーダーの女は関西本部の生徒会長に就任した。

“ジュミニ”は学校で落ち着く暇もなく、連邦軍が三年間の休戦を申し出るまで十四体の“プトロン”を倒した。
そして、戦争が一時休戦になると“ジュミニ”は解散しメンバーの殆どが軍に入り、リーダーを含む五人が稲葉学園に残った。



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