Night Blindness
変化



初めの方は連合軍優勢だったが、四年がたった2046年のある日、ロシアが開発した連邦軍の最新兵器“プトロン”を導入した事によって戦況が一気に変わった―――

連邦軍の最新兵器プトロン”が現れた戦場に残っているものは、最早人間という原形を留めていない肉の塊に血溜まり、血の付いた武器――それと、謎の灰色の砂…まさに地獄絵図だった。
連合軍の兵は皆殺し、奇跡的に生き残った者も必ず謎の死を迎える――何かに怯え、一切口が聞けない状態が数日続くと石の様に固まり、段々と灰色に変色してくると砂になり


――死ぬ。


謎の灰色の砂が、人の死体だと分かった連合軍は“プトロン”対策を考えるが、何も思いつく事も無く、ただただ犠牲者が増えていくだけだった。

焦った連合軍はしゃーなしに連邦軍に二年間の休戦を申し出る。

その間に連合軍は“プトロン”の対処法を考えることに、しかし、“プトロン”に関する情報は生物であるという事だけだった。
何も策が出ないまま一年半が過ぎたある日、とある科学者が提案した

「もう毒ガスとかでいいんじゃね?」

というかなり投げやりな策。
もう、考える事に疲れていた各国のお偉いさん方は

「もう。それでいいや。」

と、これまた投げやりな答え
それから科学者達は当時使われていた毒ガスの濃度を五倍にしたものを作り、環境に配慮して毒ガスを回収する装置も作った。

そして再び戦争が始まり、“プトロン”が現れたイラクの土地で例の毒ガスを使用する事に


“プトロン”が入れられた檻が現れ、最前線に出てきて、“プトロン”が檻から解き放たれると同時にガスマスクを装着し、紫に着色した毒ガスを掃除機のような機械で連邦軍に吹き掛ける。
全てを出し切った後、カメラを回し、カメラマンもスタンバイし風により毒ガスが晴れ、“プトロン”が姿を現すのを待った。

待つ事数分、連合軍の前に現れたのは三メートルはあると思われる身長に長く、筋肉の付いた太い手足、そして縦に長い顔、これまで大勢の人間を切り裂き、食べてきた牙や爪は鋭くとがり、光っていた…

化け物――。

誰かがそう呟いた…。
連邦軍の兵士が死んでいる事と“プトロン”が動いていない事を確認し、連合軍は毒ガス回収と“プトロン”捕縛に動き出した。
一人の兵士が“プトロン”の口元を縛るため台に乗り“プトロン”の顔に近付いた時「ひっ」と、小さな悲鳴を上げた。
それを聞き他の兵士達も寄って来て…皆、唖然とした。
“プトロン”が鋭い眼差しで――まるで餌を見るかのように兵士一人一人の顔を見ていた。
そこで兵士たちは悟った、“プトロン”は毒ガスにより、一時麻痺状態にあるだけなんだと。
早くしなければ“プトロン”が動き出す、連合軍の兵士たちは“プトロン”の細部まで写真を撮りそれ専用のノートに事細かく記入し、取り敢えず“プトロン”の手足と口を縛るのを優先した。




が、遅かった。



“プトロン”は少しずつ動き出していたのだ。

やばい、と身の危険を感じた兵士達は直ぐに“プトロン”から距離をとり銃弾を浴びせた。
が、100以上もの銃弾を浴びたにもかかわらず、プトロンの体には傷一つ付いていなかった。
試しにナイフで切り付けてみても“プトロン”の体に傷を付ける事は出来ず、逆にナイフの方が折れてしまった。
純銀の銃弾や直径が30センチメートルある砲弾も“プトロン”には効かなかった。
さらに“プトロン”もまだ痺れているというのに少しずつ足を動かし距離を詰めて来ていた。
それを見た連合軍は“プトロン”の捕縛を断念し撤退。連合軍の総本部アメリカへと“プトロン”の写真と映像だけを持って帰った。









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