Night Blindness
03



「とりあえず、自己紹介でもしよーか」

七分丈まで折ったズボンにサンダル、柄物(基本お菓子)のタンクトップ、腰に巻いた大きなベルト、手には指先が出る薄い黒の手袋…と、生徒会役員にあるまじき格好(他のメンバーはちゃんと制服を着用。ただし着こなし方は自由)の牙城 疾風(ガジョウ ハヤテ)がニコニコと笑いながら言う。語尾に☆が付きそうな勢いだ。

「ね、琉那いいよね?」

ん、と彼女から短い返事を貰った疾風はハイテンションで進行役を務める。

「じゃ、転入生から!あ、左からね!」

疾風が口を閉じ聞く体勢に入ると、皆に注目される中で一人の男が立ち上がった。

「某!元稲葉学園関東支部生徒会長、真田幸村と申しまする!」

拳を強く握りしめ大声で名乗る幸村。そのあまりにもでかい声に皆思わず耳を塞いだ。

「やりましたぞ!ぅおやかたさばぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」
「はいはい旦那ー」

佐助はうぉぉぉおおお!!と、未だ叫び続ける幸村をなだめゆっくりと座らせる。

…どうやらもう幸村がいきなり叫びだす心配は無さそうだ。
皆ゆっくりと耳から手を離す。

「うちの旦那が五月蠅くて御免ねー。俺様は真田の旦那の補佐役、猿飛佐助。以後お見知りおきを。」

がしりと幸村の頭を鷲掴みにしたまま佐助はぺこりとお辞儀をした。
その時幸村の頭がテーブルに当たり鈍い音がしたが皆、気にしない
自業自得、というヤツだ。

「まったく…何やってるのさ旦那」
「む…すまぬ…」


幸村に説教をする佐助を見て全員が(オカン…)と思っていたのは言うまでもない。


「俺は元東北支部生徒会長、伊達政宗」
「んで、俺ぁ元四国支部生徒会長長曾我部元親だ」

足と腕を組んだ政宗とその肩に腕を回した元親がそれぞれ名乗る。
二人の姿を見ているとタチの悪い不良のように見えてくる。

ずずっと元親がお茶を啜った。
意外と日本茶の似合う男だ

「ヤッポー!書記の牙城 疾風どェース!ガジョって呼んでんねー!」

勢いよく立ちあがり笑顔で言う疾風に政宗、佐助、元親が若干引いているが無視。

はい、次。と季羅の背中を叩いて急かす。

「…会計春夏秋冬 季羅(ヒトトセ キラ)で、こっちが」

ピシリ、と四人の動きが止まる。
ある者は楓の出した茶菓子にかぶり付いたまま、またある者はお茶を飲もうとコップに口を付けたまま季羅の指差す…彼の頭の上にある兎のフードを見る。
縫いつけられた口がやけに怖い。

「俺の彼女、うさ子だ」

いきなりのカミングアウト。もう、四人共季羅の事を可哀想な子を見るような目で見る。

当の本人はうさ子の頭を撫でてやりながら何やら話し掛けている。

疾風が「二人共ラブラブだねー」と言ってるところを見るとコレは日常茶飯事のようだ。

「(…ねぇ、…何あの子…電波系?)」
「(…頭イってやがんな…)」

佐助と政宗が小声で失礼極まりないやり取りを交わすが、まぁ、それも当然と言えば当然
幸村に至ってはあんぐりと口を開けたまま固まっている

季羅がマイワールドに入ってしまったためうさ子の事を忘れようとしたその時



「そういえばきらくん、今日人参の特売日よ?」



聞いた事のない女の声がした…





それも季羅の頭上で








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自己紹介長い!一話に収まらなかった…
とせが居るだけでシリアスな雰囲気が和む(?)









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