たぶん死ぬ






仕送りは家賃と光熱費でほぼ消失。バイトなんて面倒なことするくらいなら、多少の飢えは厭わないし、外出はせいぜい月2、3回。極度のめんどくさがり故に食料の調達にすら出ない所為か、気づくと空腹で動けなくなっていることもしばしば。そんな自堕落生活はずるずると続き、池袋という街にすっかり置いていかれた私は、多分今度こそ…餓死する。



「(はら減った…)」



空腹はとうに限界を超えている。仕送りが少ない月はお決まりのように死の淵をさまよう私だが、今回ばかりはどうにもならなそうだ。缶詰もない。調味料もない。食べ物が、ない。

ソファーに身を沈めながら見納めに、と自室を見渡す。ああ、狩沢さんがくれた劇場版エヴァのポスターがルーベンスの絵画に見えてくる。なるほど私は渚カヲルという名の天使に手を引かれて昇天するようだ。しかし隣にパトラッシュはいない。



「(さよなら…現世。)」

「おい…!何やってんだなまえ。」

「え…あ、だれ?」

「お前また死にかけてんのか。」



閉じかけていた瞼をなんとか持ち上げると、視界に黄金の麦畑が広がった。この色、艶、間違いない。



「パトラッシュ…」

「あ?」



頭を撫でてやろうと伸ばした手はパトラッシュによって力強く掴まれた。…ん?パトラッシュに掴まれた?



「…おい。」

「なんだ、静雄か…。」

「(戻ってきた。)」

「きてくれたの?」

「3日放置するとこれだからな。ほら、食え。」



そう言って溜息をつくと、静雄は右手にぶら下げたコンビニの袋からドリアを取り出した。今時のコンビニってそんなもん売ってるんだ…。買い物はおろかろくに外出すらしない私にお店の事情は知り得ない。とりあえず今は有り難くマンマを頂戴しようと起き上が、…れなかった。



「おい、食わねぇとまじで死ぬぞ。」

「……な…い、」

「なまえ?」

「ちからでない…。」

「お前なァ、」

「…食わせて。」



またもや長い溜息をつく静雄だが、ブツブツ言いつつも食べさせてくれるようだ。優しい。静雄愛してる。仕事の合間にこうして様子を見に来てくれる君がいないと私、生きていけない。物理的な意味で。



100304




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