雷門中では、もうすぐ試験という、学生にとっては試練の時が近付いていた。
そしてこの試験の科目は、天馬にとって特に苦手な国語と算数である。
天馬は漢字や国語の文章を読解、算数の数式を解くことが苦手であり、
長文やいくつかの並べられた数字を見るだけで、すぐに眠くなってしまう。
しかし、勉強をしなくては、学校でサッカーを出来なくなる可能性があるのだ。
試験の点数が悪かった生徒には、後日居残り勉強と称された、1週間毎日授業後にクラスに残り
出された課題を行わなければならない。早めにその課題を終わらせてしまえば良いのだが、
あいにく頭が良いとは言えない天馬は、課題を早く終わらせる自信が、自身の事でありながら
全くと言っていいほどなかった。授業後の時間を潰されるということは、それだけ午後の部活の時間が減るということで
サッカー部の部員達とサッカーをやる時間がなくなってしまう、ということだ。
天馬にとって、大好きなサッカーをやる時間がなくなるのはとても嫌なことだった。

「あー、頭痛くなってきた」
 どうやったら解けるんだよ……と、天馬は独り目の前のプリントに書かれた数式を見て、頭を抱えた。
このプリントは、信助と葵、そして狩屋が試験対策として天馬にくれたものである。
しかしあまりに解けない為、天馬は机に向かってまだ30分も経たないうちから早くも集中力が切れ始め
背伸びをしながらそのまま机に突っ伏してしまった。そしておもむろに窓の外へと顔を向けた。
「サッカーやりたいなぁ……」
 窓からは青い空が見える。まさに絶好のサッカー日和、という天気であった。
独りごちた天馬は目を瞑り、脳内でサッカーボールを蹴っている自分を想像した。
そしてそのままボールを蹴るという動作を、脳内だけでなく無意識に右足を振り上げた為
ゴンッという重い音と共に思い切り右足を机にぶつけた。
その衝撃で、机の上に置いてあったプリントが床へと落ちた。
「いった!!」
 天馬の右足の指にジーンとした痺れがはしる。ぶつけた右足を見ると、親指の先端が少しだけ赤くなっていた。

天馬は足から床へと視線を落とすと、先程自分が唸っていた原因であるプリントが机から落ちていることに気づいた。
プリントを拾うため椅子から降りる。しゃがみ込んでプリントを拾うと、天馬の目にプリントの裏面に描かれている広告が入った。
信助達から貰ったプリントの裏面は、どこかの店のおまじないと見られる広告になっていた。
どうやら、広告の裏紙を利用して天馬に試験対策の問題を作ってくれたようである。
その広告に興味を持った天馬は、集中力が切れていたことも相俟って、勉強を中断させ、その広告を読んだ。
「どんなものでもいい。手元にある紙でアソコを包んでこすると、願いがかなうよ」
 何これ、と書かれていた文章の意味が分からず、天馬の頭にたくさんのはてなが浮かび上がった。
「アソコって……?」
広告を下まで読んでいくと、天馬の疑問に答えてくれるかのように、下の方にご丁寧に‘アソコ’イラストが描かれていた。
つまり、‘アソコ’とはチンチンのことである。
その絵を見るなり、天馬の顔は赤くなり、心臓の鼓動も早まった。
 しかし天馬の興味はすぐに、この文章の意味の理解よりも、‘願いがかなう’という単語に移った。
「これをやったら……願いがかなうのかな?」

天馬は呟くと、ふいに自分の股間へと視線を向けた。
実は中学生にもなって、天馬はまだ一度もオナニーということをやったことがなかった。
勿論、オナニーという言葉も知らない。
その為、この広告の文章がオナニーのやり方である、という事も分からなかった。
 おまじないというものを信じないわけではない天馬は、‘試験で悪い点を取らないで、サッカーやりたい’という気持ちに押され
願掛けにでもなり、少しでも勉強意欲が沸くようにとの想いから、この‘おまじない’を実行することにした。
 天馬は床に座り込み、ズボンとパンツに手をかけ、一瞬戸惑うも、一気に下ろし脱ぎ捨てた。
広告を読むと、どうやらこの‘おまじない’は下半身に何も身につけてはいけないらしい。
天馬のチンチンが急に外気に触れたことで、プルンッと揺れた。

 何故か無性に恥ずかしくなったが、天馬はサッカーの為だと半ばやけくそになり
近くにあった適当な薄い紙を一枚手にとった。
その紙で、天馬のチンチンをまるで巻き寿司でも作るかのようにそっと包み込む。
そして紙で包んだチンチンを右手で握り、広告に書かれていた文章を頭の中で反復させた。

「このまま、上からこすればいいんだよね」
 天馬は思い切り手に力を入れ、チンチンを握っている右手を上から下へと擦った。
「ああっ!」
 擦った瞬間、全身がビクンと跳ね上がり、天馬は歓喜の声を上げた。
心臓もドクドクと脈打ち始める。
「何、今の…」
 天馬は自分の身に突然はしった感覚に疑問を抱く。
しかしそれは決して嫌な感覚ではなかった。そしてもう一度天馬はゆっくりとチンチンを擦った。
「あっあっ」
 天馬の身体に再び先程の感覚が蘇る。天馬は今度は手を止めることなく、チンチンを擦り続ける。
手でチンチンを擦る度に、言葉にならない快楽が天馬の全身を駆け巡る。
それと同時に、何故か無性にトイレに行きたい、と思うようになった。
チンチンを擦ると、ふわふわと浮き立つのと同時に、尿意にも襲われるのだと、天馬は初めて知った。

「あ!やばいっ」
 しばらくの間、無我夢中でチンチンを擦っていたが、尿意が限界になってきていることに気づき、名残惜しくもチンチンから手を離した。
チンチンに巻いていた紙を取り外し、トイレに行く為ズボンとパンツを穿いた。
「……はぁ」
 何故かチンチンを擦ると身体に疲労感が溜まった。天馬は立ち上がって溜息を吐く。
その瞬間、ドピュッとチンチンから何かを放出させてしまった。
「うわぁ!!」
お漏らしをしてしまったと、天馬は慌ててズボンとパンツを下ろして確認する。
そこには、パンツに白くドロドロした液体状のものがついていた。
その液体状のものから尿とは違う、独特の臭いも漂っている。
「なんで、白いんだろう?」
 お漏らしを恥じるよりも、尿は黄色いものだと認識しているため、天馬はその白い‘尿’に
ただ驚愕し言葉を失った。病気、という単語が頭に過ぎる。
身体から冷や汗をかき、天馬はその場でパンツについた白い‘尿’から目を離すことなく力なく座り込んだ。
 天馬が後に、精液、オナニーという言葉を知るのは、この出来事があった日から
1週間後の保健・体育の授業の時であった。

ーENDー




 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -