2012/12/14 18:44 幼い頃から病室の中にばかりいたものだから、僕の記憶はほとんどが真っ白だった。太陽という名前を貰ってはいたが、この体は直接日光を浴びるようなことは良しとしない。病室を抜け出して外に出れば、その代償として長いお説教と体調不良がのしかかってきた。 世の中なんてろくに見てきていない子供が出すべき結論ではないが、僕はその時心底死んでしまいたいと思っていた。生きていたって良いことがあるとは限らないし、僕の体を蝕んでいる病だって、治療しても治らない類のものかもしれない。病室でじっとして命を僅かに延ばすだなんてごめんだ。生きてさえいれば、という人もいる。でも僕は、代わり映えしないだけであろう毎日を送るために生きたって仕方が無いと思ったのだった。 大人たちは口を揃えて「少し我慢して治療すれば良くなる」と言った。なのに、「少しってどれくらい?何日?何週間?何ヵ月?」そう僕が尋ねると、皆一様に困った顔をする。治る保証が無いことも、かかる時間すら分かっていないことも、僕は気が付いていたということはなんとなく言い出せず、ただ頑なに治療を拒み、病室を抜け出していた。 だから、突然僕が治療を受けたいと言い出した時、誰もが驚いていた。何か辛いことがあったのではないかと心配された。治療を薦めていたのは自分たちなのにあまりにひどく狼狽えるものだから、どうにもおかしくて笑ってしまった。何も辛いことは無かったよ、みしろ、とても楽しいことがあったから治療を受けたくなったんだ。そうだよね、天馬。 天馬とするサッカーは、とても楽しい。もちろん大人数でやるサッカーは1人のそれより数段楽しいのだけれど、天馬とのサッカーはもっと楽しい。 その理由には、天馬が誰よりもまっすぐにサッカーを愛していたこともある。僕の見てきた天馬は、いつだってサッカーを楽しんでいた。 自由にサッカーを楽しんで、純粋にサッカーを愛する天馬が羨ましくて、時に妬まくて、それ以上に、眩しかった。 天馬に出会ってから、ちゃんとしたチームでプレイするサッカーを初めて経験した。いつも憂鬱だった検温の時間だって、冬花さんに天馬の話をしていれば、とても楽しい。治療の中で辛いこともあったけれど、これが終わったらと考えたら耐えられた。だってもう一度、天馬とサッカーがしたい。 天馬とのサッカーが好き。サッカーをしている天馬の笑顔が好き。天馬が、好き。 僕に大切なものをくれた天馬に、僕は何かを返してあげたかった。だから、天馬の大切なものが脅かされた時には、絶対に力になってあげたい。 もう一度天馬と何かをかけた「戦い」でないサッカーをするために、愛されるサッカーを守るために、僕は立ち向かい続ける。 天馬のために尽くして尽くして恩返しして、もし天馬が何か揺らがない大切なものを(サッカー以外に)見付けたら、きっと身を引ける。太陽はすごくイケメン。 フェイとの間に入っていくとしたらそれは多分天馬がフェイ自身を好いているわけではないから。いや、嫌ってると言いたいわけではないけど。 でも真剣な雨天ってあんま見ないよね。SSとかも。まあ暗いね、確かに!ではお粗末様でした!
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