人はそれを××と呼ぶ*後編




「私の番ですね」


フォレストは、多めに作ったロールキャベツを入れた。

ぐつぐつと煮込まれる鍋。

何とも言えない匂いが、辺りに広がっている。

この何とも言えない匂いの元が、本日の昼食である。


「アーリア」


最後の一人である彼女の顔色が良くない。


「アーリア?」

「い、入れるわよ!」


アーリアはヤケを起こしたかのように、豚汁を入れた。

巨大鍋の中身は、結構な量だ。

五人で食べ切れるような量ではない。


「次はボクの番だな」

「!!!」


突然の声に驚いて、顔を向ける。

気に入っているのか、仮面のままのルキウスがいた。


「ルキウス、貴方いつから……」


その場にいる者を代表して、アーリアが尋ねた。


「いつから? 『みんな、オレの話を聞けよ! hearじゃなくて、listenだよ!』から」


ほとんど話の始めからいる。

昨日からいる。

何故、誰も気づかなかったのだろう。


「お前、もしかしたら野宿だったのか?」

「だとしたら、何なの。兄さん」

「体冷やしてないか? 風邪ひくぞ?」


カイウスは、最近入手した特殊能力『兄バカ』を発動した。


「兄さん、何度も言ってるけど、兄貴面止めてくれない?」


だったら、「兄さん」って呼ぶなよ。

心の中で突っ込んでおいた。


「で、ルキウスも参加したいってことなの?」


ルビアの問いに、こくりと頷いた。


「参加させてあげればいいんじゃないか? 一緒にお昼ご飯を食べようか」


どうやら、ティルキスは巻き込むつもりらしい。

ルキウス自身が望んでいるのだから、問題はないが。


「おい。鍋が焦げるぞ!」


うっかり止まっていたカイウスの手が、フォレストの声に慌てて動き出した。


「入れろよ、ルキウス」


カイウスの許可がおり、彼は大皿に積まれたそれを取り出した。


「……」


その量に言葉を失う。

しかも、大皿三枚分も用意していた。

ぐつぐつと煮える物体(液体?)Xに、フルーツサンドを大量に入れた。

水分を含んで、やわらかくなるパン。

そして、生クリームに包まれたフルーツ。

それらが合わさって、ついに完成した。


「……」


スープ皿に盛られた本日の昼食。

人によって、魚やら肉やらパンやら、具はバラバラである。


「お、美味しいモノ×美味しいモノ=美味しいモノだよなっ!」


カイウスは明るく言った。

その顔は引きつっているが。

まるで現実逃避のように、みんな口々にそれを言った。

その公式は正しいはずだ。

と、覚悟を決める。


『いただきます!』


その後、彼らがどうなったのか知る者はいない……。






E N D



2007/11/22
移動 2011/02/01




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