★闇★鍋★*後編
暗幕の引かれた部屋にメンバーは集まっていた。
それぞれ食材の入った紙袋を持っている。
「みんな、準備オッケー?」
食事当番のアニスは、張り切っている。
「いつでもいいぜ」
「私も」
ルークとナタリアもそのテンションについていく。
他のメンバーはついていけない。
「私もいいぞ」
「!!!!」
アニス以外の五人が驚いた。
ちなみに、ジェイドは驚いているようには見えないが、驚いている(……多分)。
「ヴァン師匠!?」
何故かメンバーに加わっていたのは、ヴァンと六神将。
ルーク達は戦闘体勢に入る。
「待て。私たちは、導師守護役に招待されたのだぞ?」
「無理矢理だったけどね」
シンクがため息を漏らす。
「たまにはいいだろう」
とラルゴ。
「閣下があまりにも喜んでいたから……」
とリグレット。
「お、俺は別に……」
とアッシュ。
「ジェイドを倒すには、いい機会です」
とディスト。
「アリエッタの復讐は、ここから始まる……です」
とアリエッタ。
更に恐怖が増す闇鍋大会。
「根暗ッタ、余計なことは言わない方がいいよ〜」
「ディスト〜、あなたもです♪」
「「……」」
アニスとジェイドの顔は、本当に怖かった。
byアリエッタ&ディスト。
「じゃ、明かり消すよ。食材を鍋に入れてね〜」
真っ暗になる部屋。
それぞれ用意した食材を入れた。
「後は、火が通るまで待つ」
暗い中で沈黙。
「何だか変な空気ね」
ティアの声が震えている。
「こういう時は、怪談ですわね!」
例え暗闇の中であろうと(火のおかげで、真っ暗ではないが)、ナタリアが瞳を輝かせているのは、容易く想像できた。
「ちょっ、ナタリア!?」
「よし。俺から始めるか」
ナタリアのためなら、どんな努力も惜しまない彼が、ティアの言葉を遮った。
「お願いしますわ、ルーク」
「俺かよ!」
「ナタリア……」
「冗談ですのに」
くすくすと笑うナタリア。
「ティア、いつもこうなのか?」
「大体そうです」
耳を塞ぎながら、リグレットの問いに答えた。
「……聞こえているのなら、耳を塞ぐ意味はないだろう」
「さ、さすが教官! 勉強になります」
いつの間にかすっかり変わってしまったティアに気づかれないよう、リグレットはため息をついた。
「そろそろいいかもよ」
アニスが鍋の蓋を取った。
部屋中に広がるおいしそうな香り。
……に混ざる微妙な香り。
「早速」
「いただきます」
全員が手を合わせ、箸を装備した。
「みんな、準備オッケー? せーのっ」
全員の箸が鍋の中の獲物を掴んだ。
ぱくっ。
もぐもぐ。
「……」
見事な沈黙が続いた。
誰も何も発しない。
「ごちそうさまでした」
数人がそう言い、全員がマッハでその場を去った。
一体、何が入っていたのか……。
それを知る者は、口を閉ざしてしまった。
以降『闇鍋』は、触れてはならない料理となった。
E N D
2006/07/31
移動 2011/02/01
(ケテルブルクのレストランに、闇鍋があったような気が……)